波動歯車機構の弱点を克服する特許技術を確立、超高性能な減速機の実現へメカ設計ニュース

テクファ・ジャパンは、新たな手法に焦点を当て開発された波動歯車機構を用いた減速機の設計方法に関する特許技術を確立したことを発表した。

» 2024年02月09日 09時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

 テクファ・ジャパンは2024年2月1日、新たな手法に焦点を当て開発された波動歯車機構を用いた減速機の設計方法に関する特許技術を確立したことを発表した(特許第7366468号)。

 1997年6月創業の同社は、カムおよび非円形歯車(カムギア)の開発、設計、製作を得意とし、それらに関する豊富な知見やノウハウを武器に、技術支援やコンサルティングなども手掛けている。今回発表した特許技術は、より大きな伝達トルクを獲得したり、より高分解能で微小な回転量を得たりするために用いられる減速機のうち、波動歯車機構による減速機に関するものとなる。

 波動歯車機構は、同じく減速機に用いられる遊星歯車やサイクロイド歯車、ローラーギアカムなどの機構要素と比べて、部品点数が少なくて済むことから小型、軽量で、バックラッシがほぼゼロであるという伝達機構として理想的な特長を備えている。その一方で、外歯車(非円形歯車)をカム機構でわずかに変形させる必要があり、かつ減速比を大きくするには歯数を増やさなければならない(歯形を小さくする必要がある)ため、剛性に注意が必要となる。この波動歯車機構の弱点を補うためには、できる限り歯車対(かみ合う2枚の歯車の組み)の同時かみ合い数を多く取る必要があるという。

テクファ・ジャパン 代表取締役社長の香取英男氏 テクファ・ジャパン 代表取締役社長の香取英男氏

 この課題に対し、同社 代表取締役社長の香取英男氏は「カム機構と非円形歯車機構の理論を同時に適用したものが波動歯車機構であるため、創業以来、これらを専門にやってきた当社こそが、波動歯車機構による減速機の課題解決に取り組むべきだと考えた。われわれは、カム機構と非円形歯車機構の双方の理論を忠実に適用し、波動歯車のかみ合いを解析することで、今回の波動歯車機構を用いた減速機の新しい設計方法を確立することができた」と述べている。

 今回同社が確立した波動歯車機構は、

  1. 内歯車と外歯車の同時かみ合い数を従来比2〜3倍に増大でき、個々の歯形の負担が抑えられて剛性が高まる他、高いトルク伝達や精密な位置制御を得ることが可能となる
  2. 歯車歯形のかみ合い線上での圧力角がゼロとなり、他の有効歯たけ部の位置の圧力角も小さくなるため、回転伝達力の効率を高めることができる
  3. 同時かみ合い数が増大することで、ノーバックラッシの効果がさらに向上する

といった特長があり、あらゆる電動駆動源の大幅な性能向上が期待できる。

特許技術に関する資料(1)特許技術に関する資料(2) テクファ・ジャパンが確立した特許技術に関する資料[クリックで拡大] 出所:テクファ・ジャパン
考案した方法が理論的に正しいかを検証するために香取氏が製作したプロトタイプ(原理試作) 考案した方法が理論的に正しいかを検証するために香取氏が製作したプロトタイプ(原理試作)[クリックで拡大]

 「これらの特長を生かし、小型、軽量で剛性が高く、かつ高精度な減速機を実現できるようになる。従来品に対して歯車の材質、加工方法や精度が同じという条件の下、減速機の大きさが同じであれば2〜3倍の伝達力を作り出せる。逆に、伝達力が同じであれば減速機の大きさを2分の1〜3分の1に抑えることができる」(香取氏)

 具体的な適用先としては、航空機、ヘリコプター、ロケット、ドローンなどの飛行体、電動車(EV)、ロボット、産業機械/機器、計測機械などが挙げられる。さらに、新たな可能性として、ビルや住宅などにおける設備機器(自動開閉するシャッターや窓など)への適用も期待できるとしている。

 なお、同社では今回の特許技術による減速機の製造、販売は行わず、特許の成果を実施ライセンスとして供与する形でビジネスを展開していく考えだ。併せて、関連技術の教育/支援およびコンサルティングサービスを展開する予定だとする。

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