生成AI(人工知能)に注目が集まる中で、それら大規模なAIモデルの学習を行うためのデータを保持するために、クラウドやデータセンターにさらなるストレージの容量拡張が求められている。調査会社のIDCによれば、2022〜2026年にかけてデータ生成量は2倍の30Z(ゼタ)B(1ZBは10億TB)に達するという。その一方で、現在のデータインフラのストレージ容量はは2ZBにすぎず、ほとんどのデータは捨てられている状態にある。
日本シーゲイト 代表取締役社長の新妻太氏は「データインフラのストレージ容量を効率的に拡張することが求められる一方で、そのために必要な投資を抑えつつ、脱炭素をはじめとする環境負荷を抑えてサステナビリティを実現することも必要だ。膨大なデータ生成に対して、10億〜15億米ドルは必要になるといわれるデータセンターを新たに建築することは投資コストやサステナビリティの観点から最適とはいえない。今回発表したMozaic 3+は、既存のデータセンターで広く用いられているHDDを置き換えることでストレージ容量をほぼ倍増させることが可能であり、消費電力も増やさずに済む」と説明する。
例えば、クラウドのデータセンターで広く用いられているHDDは、PMR技術をベースに1プラッタ当たりの記録容量1.78TBのディスクを9枚組み込んだストレージ容量16TBの製品だ。これに対して、Mozaic 3+ベースの1プラッタ当たりの記録容量3TBのディスクを10枚組み込んだHDD製品のストレージ容量は30TBとなる。16TBのHDDを用いて100E(エクサ)B(1EBは100万TB)のデータセンターを構築していたとすれば、これらを30TBのHDDに置き換えればデータセンターのストレージ容量は187EBになる。
また、消費電力についても、16TB/9ディスクの製品が1TB当たり0.59Wであるのに対し、Mozaic 3+を用いる30TB/10ディスクの製品は40%削減の1TB当たり0.35Wとなる。「例えば、既存のHDDを用いるデータセンターの電力コストが年間6700万米ドルとすると、ストレージ容量を変えずにMozaic 3+のHDDに置き換えた場合には4000万米ドルまで削減できる」(新妻氏)という。
新妻氏は「現時点で、データセンターのストレージ容量の90%にHDDが用いられている。HDDと、半導体技術をベースとするSSDの総所有コストの差は近年縮まる傾向にあったが、当社が開発したMozaic 3+によりHDDがSSDの5分の1という状態が今後も継続することになるだろう。そして、データセンターのストレージ容量のうちHDDが90%という状態も維持できるのではないか」と述べている。
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