学生フォーミュラもEVシフト、インホイールモーターや軽量化に注力車・バイク大好きものづくりコンサルタントが見た学生フォーミュラ2023(1/3 ページ)

ようやく2023年、学生フォーミュラは静的審査を今回もオンラインで実施するなど感染に配慮しながらも、ほぼ本来の大会の姿に戻すことができたため、筆者も4年ぶりに静岡県小笠山総合運動公園を訪れました。

» 2023年12月20日 06時00分 公開

 2019年以来、4年ぶりに学生フォーミュラ日本大会を取材することができました。2020年は大会中止、2021年は静的審査(プレゼンテーション、デザイン、コストと製造)のみで完結、流行が収まってきた2022年は国内チーム限定……と、この3年間は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が本大会にも大きな影を落としました。

 そしてようやく2023年、静的審査を今回もオンラインで実施するなど感染に配慮しながらも、ほぼ本来の大会の姿に戻すことができたため、筆者も4年ぶりに静岡県小笠山総合運動公園(通称エコパ)を訪れました。審査内容の詳細は自動車技術会のWebサイト(※)をご覧ください。

(※)関連リンク:https://www.jsae.or.jp/formula/

学生フォーミュラ日本大会2023の集合写真[クリックで拡大] 出所:自動車技術会

暑さと熱さとEVシフト

 学生フォーミュラ日本大会2023は8月28日〜9月2日の日程で開催されました。筆者が現地に訪れたのは9月1日、とにかく暑い! 最高気温は32℃を超え、還暦越えの筆者にはなかなか厳しい取材環境でした。主催者側の配慮によりエアコンを効かせた大型バスが休憩場所として2台用意されていたのはありがたかったです。そんな中で例年通りピットでのインタビューを行いましたが、この3年間の鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように学生たちの熱さがひしひしと伝わってきました。

熱中症予防のための休憩用大型バス[クリックで拡大]

 学生フォーミュラではEV(電気自動車)シフトも相当に進んでいます。EVクラスは2012年(第10回大会)にプレ大会が開催され、6チームが参加。その後EVを選択するチームが徐々に増え、今大会では全77チーム中23チームがEVという状況です。第15回大会、名古屋大学のチームリーダーの「私たちは総合優勝するためにEVを選んだ」という言葉が今でも記憶に新しく、同大学はそれ以来EVでの参戦を続けています。まずはその名古屋大学のピットレポートをお伝えしましょう。

#E4 名古屋大学フォーミュラチーム(FEM)

筆者 今までの動的審査の成績を教えてください。

チームリーダーの澤田侑典さん アクセラレーション審査では日本最速記録をマークし1位を取ることができました(3.649秒、今までの記録を0.3秒上回るタイム)。スキッドパッドでは4位、オートクロスで10位と目標よりは少し劣るのですが、十分に良い結果を出せていると思います。

筆者 日本記録とはすごいですね! やはりEVは加速が有利なのでしょうけど、今回のマシンは四輪インホイールモーターと聞いたのですが、今までそれを採用しているチームありましたか?

澤田さん 日本ではわがチームだけです。

筆者 ですよね。先ほどプレスの受付でちらっと聞いた時、驚いたもの。これは絶対に取材しなければと思いお邪魔しました。

澤田さん アクセラレーションのタイムを見た時には感動して涙がました。1年かけて活動してきた結果が好タイムとして現れるのは本当にうれしいです。

筆者 (ピットで作業しているメンバーの姿を見て)ああやってこまごまとした作業の積み重ねだもんなぁ……

澤田さん 私たちのチームは50人いて、全員が力を合わせて活動しています。その結果が形として見えると「本当に1年間やって良かったなぁ」と感じ、ウルウルしてきます。

筆者 昨夜NHKで「魔改造の夜」という番組を放映していてね、単純なテーマでモノづくりを競うのだけど、大企業/中小企業の社員、学生さんたちが真剣に取り組んでいる。だからこそ自分のチームはもちろんのこと、ライバルチームが無事完走した時にみんな泣いているんだよね。モノづくりの素晴らしさそのものですね。では、マシンの特徴を教えてください。

澤田さん 四輪それぞれにモーターを配置、独立して制御することにより運動性能を高めています。また、ボディーはカーボンコンポジットです。四輪インホイールもカーボンも欧米のチームでは当たり前になっているので、まずはそこに肩を並べたかったので採用しました。

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