物質・材料研究機構は、磁性体における「異方性磁気トムソン効果」を直接観測することに成功した。発生する熱量は、磁化が温度勾配や電流に対して垂直な場合よりも、平行な場合の方が大きいことを突き止めた。
物質・材料研究機構(NIMS)は2023年11月22日、磁性体における「異方性磁気トムソン効果」を直接観測することに成功したと発表した。
異方性磁気トムソン効果は、温度差のある導電体に電流を流すと温度差や電流に比例して発熱や吸熱を生じるトムソン効果が、磁化の方向によって変化する現象だ。
同研究では、強磁性合金Ni95Pt5に温度差を付与しながら電流を流し、発生する温度分布をロックインサーモグラフィ法により計測した。その結果、発生する熱量は、磁化方向が温度勾配や電流に対して垂直な場合よりも、平行な場合の方が大きいことを突き止めた。
同機構は、2020年に非磁性の導電体で発生するトムソン効果の磁場による変化を観測しており、熱計測をさらに精密化することで、磁性体での異方性磁気トムソン効果の観測が可能になった。
熱電変換技術の駆動原理にはゼーベック効果やペルチェ効果があり、これらに及ぼす磁気の影響は研究されてきたが、トムソン効果は熱電変換能が小さいことから、計測や評価方法が確立されておらず、磁場や磁性から受ける影響についてこれまで明らかになっていなかった。
今後、トムソン効果についてさらに研究を進めることで、熱、電気、磁気の相互作用による新しい物理現象の解明や、磁気で熱エネルギーを制御する熱マネジメント技術への応用が期待される。
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