“解析専任者に連絡する前に設計者がやるべきこと”を主眼に置き、CAEと計測技術を用いた振動・騒音対策の考え方やその手順を解説する連載。連載第17回では、騒音低減技術の基本である「遮音」と「吸音」のうち、吸音について詳しく取り上げる。
騒音低減技術の基本である「遮音」と「吸音」について取り上げます。遮音と吸音を説明した後に、伝達関数をベースとした騒音低減施策の立案と音のシミュレーションに関する解説へと進みます。
音は「圧力波」であると説明しましたが、音圧の実効値の二乗がエネルギーとなるため、単位面積の仮想平面を通過するエネルギーとして説明します。単位は[W/m2]です。壁に音波が入射したときのエネルギー分配を図1に示します。入射した音波は反射するものと透過するものがありますが、反射波のエネルギーと透過波のエネルギーを足しても入射波のエネルギーと等しくなりません。それは、壁でエネルギー損失が発生しているためであり、これを「吸収音波」と呼びます。
エネルギー保存則から次式が成立します。
反射率と透過率は次式で定義されます。
ここで吸音率を次式で定義します。反射してこなかったエネルギーの割合で、透過音波と吸収音波の和です。
「あれ? 吸音材って壁に貼るやつだよな。何で反射音波で吸音率が定義されるんだ!?」と思われるかもしれませんが、図2のような状態を考えれば理解できると思います。
対象とする壁の裏側に音波を完全に反射できる壁があったとします。透過波はこの壁に反射されて再び最初の壁を透過して戻ってきます。入射波側から見れば、この透過波は反射波として観測されます。2つの反射波のエネルギーの和は入射波よりも小さく、小さくなったエネルギーは図の青色の吸収音波となります。この場合、エネルギー保存則は式5、反射率は式6、吸音率は式7となり、吸音率(式7)の分子は吸収音波、分母は入射音波となり、エネルギー損失の度合いを表しています。図の青色の吸収音波のエネルギー量を直接測定することはできないため、反射波の大きさから壁のエネルギー吸収の度合いを定義します。
なお、R2の方の2回目の音波が壁を通過する際、入射時に反射音波が発生しているはずですが、ここでは説明を簡単にするために省略しています。
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