NTNは新たに建設した和歌山製作所(和歌山県橋本市)の落成式を行った。最新設備やシステム、デジタル技術の活用でスマートファクトリー化を目指す和歌山製作所の取り組みを紹介する。
NTNは2023年10月12日、新たに建設した和歌山製作所(和歌山県橋本市)の落成式を行った。本稿では、「NTN STAR WORKS WAKAYAMA」の愛称を持ち、最新設備やシステム、デジタル技術の活用で、生産リードタイムを従来比3分の1に短縮するなどスマートファクトリー化を目指す和歌山製作所の取り組みを紹介する。
和歌山製作所は周辺で住宅や商業施設が増えてきた金剛製作所(大阪府河内長野市)の移管先として建設された。自動車向けのボールベアリングやクラッチレリーズベアリングなどのベアリングおよび食品機械や鉱山機械など向けのベアリングユニットを生産する。既に2019年10月に完成し、2020年12月から量産を始めている。敷地面積は約10万9100m2、延床面積は約6万100m2となっている。
5カ年計画となっている金剛製作所からの移管はまだ3分の1程度の進捗であり、2025年までに全ての生産設備を移す予定だ。NTN 代表執行役 執行役社長 CEOの鵜飼英一氏が和歌山製作所について「現時点が完成形ではない。まだ発展途上だ」と話すのもそのためだ。移管完了後、金剛製作所は閉鎖し、土地は売却する。
和歌山製作所では、NTNの主力事業である自動車分野で今後一層の需要の増加が見込まれるEV(電気自動車)向けニーズへの対応と、NTNが目指しているアフターマーケット事業拡大に向けた供給力強化を目指す。
EVには駆動源となるモーターと周辺部品を組み合わせたeAxleが使用されるケースが増えている。eAxleはバッテリーの直流を交流に変換するインバータと、モータおよびモーターの回転から走行に必要なトルクを生む減速機で構成されており、ベアリングはモーターや減速機に使われる。より長い航続距離を確保するためeAxleの小型化、軽量化と、小型でも走行に必要な回転、トルクを生み出すためのモーターの高出力化、高速回転化が進んでおり、ベアリングにも高速回転性能が求められている。
NTNでは既に回転性能を表すdmn値で220万という業界最高の高速回転性能を持つEV/HEV(ハイブリッド車)用高速深溝玉軸受や絶縁被膜付き軸受を開発しており、和歌山製作所ではこれらeAxle特有のニーズに対応する製品の生産を行う。
「中国を筆頭に世界的にEVシフトが加速する中、これまでのエンジンとトランスミッションが、eAxleに変わっていっている。われわれは高速回転用のベアリングを技術的に得意としており、金剛製作所と和歌山製作所もサイズ的に合致する製品が生産できるため、対応の拡大を図っていく」(鵜飼氏)
補修用ベアリングを供給するアフターマーケット事業の拡大も進める。NTNのアフターマーケット事業は営業利益率が16.6%(2023年3月期)と他の事業に比べて高い。2024年度から始まる新たな中期経営計画の期間中に売り上げを約1.5倍に引き上げることを目標とするアフターマーケット事業では、ユーザーが求める製品を必要なタイミングで供給することが重要になる。
NTNでは、売れ筋型番の在庫を常備する汎用品在庫即納システム「FIRST」の拡張を進めており、和歌山製作所でもFIRST用の在庫となる製品を生産し、安定供給につなげる。
「補修用の製品といっても、専用の生産ラインがあるわけではない。OEMメーカー向けの量産ラインを使って補修用の製品も作っている。その中で、補修用の割合をさらに増やしていくための拠点の1つになる」(鵜飼氏)
さらに、和歌山製作所では最新設備やシステムを取り入れてスマートファクトリー化を図っている。
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