デバラボでは、取りやすいバリを出すための加工方法も探索する。バリの大きさは不均一で、アプローチできない場所に発生したり、工具の摩耗具合によっても大きさや硬さが変化したりする。その様態は「生き物」とも表される。バリの発生メカニズムが分かれば、工程内のバリ取り負荷を見越した効率的な生産ができる。そこで取りやすいバリを出すバリ制御について研究、バリ形状に適した工法と工具選定を提案する。
まず必要なのはバリの数値化だ。
スギノマシン 常務執行役員 精密機器事業本部長の酒井英明氏は「どこからバリというのかも個人によって異なる。ただ、ユーザーの生産性にもかかわるので、われわれから『ここまでがバリだ』というのも違う。数値化することでどこまで許容できるのかを話し合っていければ」と話す。
杉野氏も「図面に『バリなきこと』と書いてあっても、それがどんな状態なのかはそれぞれの価値観になっている」と指摘する。
その他、50年以上にわたり磨いてきたウォータジェット技術により、深穴や交差穴など機械加工では難しいバリ取りの自動化の可能性を広げる。ロボットによる高速化と仕上がり品質の向上も追求する。
同社 精密機器事業本部 事業企画室 デバラボ Gr グループ長の武藤充氏は「バリ取りは基本的に手作業で、設計者もそう考えている。上流の設計者までアクセスしないと手作業が残り続ける。設計から変えないとバリ取りの自動化はできない。そのためには、バリを数値で示さなければ設計者には届かない。バリは薄くなればなるほど触わったり、たたいたりすれば取れるようになる。バリを削り取るのではなく、そういったところまで昇華できれば」と意気込む。
会見では、海外のバリ取り事情についても話題に挙がった。欧州でもバリ取りは危険な作業として自動化が積極的に求められている他、米国ではバリ取りのような作業には時間制限が設けられるケースもあるという。一方で、これまで人件費が安かった国でも、バリ取りの質の安定や人件費上昇への対応が必要になり、自動化のニーズが高まっている。
杉野氏は「われわれの生産財企業にとっては今、すごいスピードで世の中が動いている。特に脱炭素関連の流れは本当に早く、われわれの売り上げの中身もこの2、3年で大きく変わった。ただどんな時代になっても、加工がある以上はバリ取りはなくならない。今後伸びていくとみられる3Dプリンタでも、表面の加工は必要だ。バリ取りの関連技術は幅広い可能性を持っている」と述べた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.