AVEVAは、国内製造業のDX推進に必要なデータの利活用に貢献する同社の製品戦略について説明した。
AVEVAは2023年7月25日、東京都内で会見を開き、国内製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に必要なデータの利活用に貢献する同社の製品戦略について説明した。主要顧客である素材/化学メーカーやエネルギー企業などが有するプラントの設計から運用、最適化に至るまで全てのライフサイクルをカバーする同社のソフトウェアソリューションを活用することで、より容易にデータ利活用が可能になることを訴えた。
プラント設計用のCADを展開してきたAVEVAは、2017年にシュナイダーエレクトリック(Schneider Electric)の傘下に加わった後、2018年には「Wonderware」などをはじめとするシュナイダーエレクトリックのソフトウェア事業との合併を果たした。そして2021年には、プラント向けの時系列データ管理ソフトウェア「PI System」を手掛けるOSIsoftを統合し、2023年にはシュナイダーエレクトリックの100%子会社となった。
AVEVA バイスプレジデント 日本統括の小暮正樹氏は「プラントの設計、運用(オペレーション)、AI(人工知能)やシミュレーションなどを活用した最適化に至るまで、プラントのライフサイクルを幅広くカバーするポートフォリオがそろった。世界で2万社以上の顧客に採用されており、日本でも売り上げの3分の1を占める素材/化学メーカーを中心に導入が拡大している」と語る。
小暮氏が強く訴えたのが、国内製造業におけるデータ利活用がなかなか進んでいない現状である。「HDD大手のシーゲイト(Seagate)は、企業が利用可能なデータのうち68%を利活用できていないと指摘しており、海外製造業も同じ悩みを抱えている。しかし、カーボンニュートラルへの対応なども含めて、海外の製造業は企業の垣根を超えた最適化を進めようとしている。これに対して国内製造業は、これまで進めてきた自社内における部分最適化の段階にとどまっている」(同氏)。
実際に2023年4月に開催された世界最大級の産業見本市「ハノーバーメッセ2023」でも、AVEVAはシュナイダーエレクトリックグループとしてデータ利活用を強く訴えた展示を行っている。
会見には、東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリストの福本勲氏が登壇し、ハノーバーメッセ2023の最新トレンドから、国内製造業におけるデータ利活用がどうあるべきかについて論じた。
2011年開催の「ハノーバーメッセ2011」で初めてコンセプトが提示されたインダストリー4.0だが、それ以降のハノーバーメッセはインダストリー4.0やデジタル製造技術の進捗を確認する場として注目されている。福本氏は「インダストリー4.0の発表から12年経過した現在、日本の取り組みは既存ビジネスの延長線上での効率化にとどまっているが、ドイツをはじめ海外勢の取り組みは着実に進んでいるように感じる」と述べる。
実際に、日本国内ではインダストリー4.0=スマート工場という捉え方をすることが多いのに対し、もともとのインダストリー4.0ではモノづくりだけでなく社会課題解決を視野に入れていた。近年のハノーバーメッセで話題になっているカーボンニュートラルやサプライチェーンレジリエンスへの対応も、インダストリー4.0の枠組みに含まれていることになる。
福本氏は、ハノーバーメッセ2023のトレンドとして「ソフトウェア比重の高まり」「業界を超えたエコシステム構築の加速」「データ共有圏の取り組みの加速」の3つを挙げた。また、「インダストリアルメタバース」「サイロ化されたデータの統合/利活用のソリューション」「OpenAI活用」といった最新技術にも注目が集まったという。
今後、国内製造業が取り組むべき指針としては、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーといった地球規模の課題に対応するためのデータをデジタルでつなぎ合う仕組みが必須になることを挙げた。福本氏は「インダストリー4.0の草創期は、GEの『Predix』やシーメンスの『MindSphere』などに代表される個社が提案する産業用OSとしてのプラットフォームの提案が主流だった。しかし近年は、業界をまたいでつながるオープンプラットフォームによるエコシステムの構築にシフトしつつある。そのために用いられるデータ共有圏などのルールメークは欧州が主導しており、巧妙な仕掛けで彼らにとって利益がもたらされる構造にしようとしている。国内製造業は、より大きな視野でグローバルにサプライチェーンを広げて、データ共有圏の仕組みづくりにも積極的に関わっていかなければならない」と強調した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.