特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

ウェザーニューズとオムロンが気象IoTセンサーで協業、15カ月で開発を完了製造業IoT(1/2 ページ)

ウェザーニューズとオムロンが新型気象IoTセンサー「ソラテナPro」を発表。電源が得られる場所であればユーザーが任意の場所に簡易に設置でき、7つの気象に関わる要素を1分ごとに観測して内蔵のLTE-M通信モジュールによってクラウドにデータ収集できる。

» 2023年07月06日 06時30分 公開
[朴尚洙MONOist]

 ウェザーニューズとオムロンは2023年7月5日、東京都内で会見を開き、新型気象IoT(モノのインターネット)センサー「ソラテナPro」を発表した。電源が得られる場所であればユーザーが任意の場所に簡易に設置でき、気温、湿度、気圧、雨量、風向、風速、照度という7つの気象に関わる要素を1分ごとに観測して、内蔵のLTE-M通信モジュールによってクラウドにデータ収集できる。従来モデルの「ソラテナ」と比べて雨風の計測上限を2倍に高めており、雨量は線状降水帯発生時にも対応できる50mm/h、風速は大型台風上陸時の暴風も計測可能な50m/sとなっている。同日からウェザーニューズが販売を開始し、製造はオムロンが担当する。2023年度末までの目標は、販売とレンタルを合わせて500台。

新型気象IoTセンサー「ソラテナPro」 新型気象IoTセンサー「ソラテナPro」。観測データは天気アプリの「ウェザーニューズ」で確認できる[クリックで拡大]

 ソラテナProは、外形寸法が縦125×横125×高さ267mm、本体重量は1kgで、7つの気象要素をまとめて計測できる気象センサーとしては小型サイズとなっている。測定範囲は、気温−20〜50℃、湿度0〜100%、気圧600〜1100hPa、雨量0〜50mm/h、風向0〜360度、風速0〜50m/s、照度15万lx(ルクス)となっており、これらを1分ごとの頻度で観測し、LTE-M通信でクラウドに送信する。電源は100VのAC電源の他、太陽光発電システムなどとの連係により供給されるDC電源(5〜12V)にも対応している。消費電力は1.5Wだ。

 各気象要素を観測するセンサーは、本体上部の雨量センサーと照度センサー、中空となっている本体中央部に組み込まれている風速/風向センサー、LTE-M通信モジュールなどを含めた制御回路などが入る本体下部の下側に気圧センサー、温度センサー、湿度センサーが組み込まれている。

「ソラテナPro」の外形寸法と各センサーの設置位置 「ソラテナPro」の外形寸法と各センサーの設置位置[クリックで拡大] 出所:オムロン

 雨量と風速の計測上限を高めるために採用したのが、新たな雨量センサーと風速/風向センサーである。雨量センサーは、透過型の光センサーを用いて、センサーの入り口部を通過する雨の粒の大きさと個数をカウントすることで雨量を観測する仕組みだ。一般的な貯水型雨量計や転倒マス型雨量計のように雨をためる必要がないことが大きな特徴となっている。また、風速/風向センサーは、4つの超音波センサーを用いて、風速による音速の変化量から風速と風向を算出している。

「ソラテナPro」の雨量センサー部「ソラテナPro」の風速/風向センサー部 「ソラテナPro」の雨量センサー部(左)と風速/風向センサー部(右)[クリックで拡大]

 また、ソラテナProは3500万ダウンロードの実績がある天気アプリの「ウェザーニューズ」と連携して利用できるようになっている。ソラテナProによる観測データに加えて、天気予報や雨雲レーダー、停電リスク予測などの有料機能も含めたさまざまなコンテンツとともに、ウェザーニュースアプリ1つでシームレスに確認可能だ。観測された気温、雨量、風速が設定値を超えた場合には、ウェザーニュースアプリからのプッシュ通知で知らせることで災害リスクの検知と迅速な対応に役立てられる。

観測機一覧の画面リアルタイム観測データの画面 「ソラテナPro」と天気アプリの「ウェザーニューズ」を連携して利用できる。観測機一覧(左)とリアルタイム観測データ(右)の画面[クリックで拡大] 出所:ウェザーニューズ
「ソラテナPro」の観測データのグラフ表示気象リスクのプッシュ通知も可能 天気アプリ「ウェザーニューズ」における「ソラテナPro」の観測データのグラフ表示(左)。気象リスクのプッシュ通知も可能(右)[クリックで拡大] 出所:ウェザーニューズ

 ソラテナProでクラウドに収集した観測データはPCのWebサイトで確認することもできる。過去24時間や1カ月分の観測データを確認したり、日付や月を指定して過去データ(CSV形式)をダウンロードして分析したりといった機能を提供している。観測データはAPIで取得できるので、企業のアプリケーションや自社システムに組み込むことも可能だ。

監視や分析に便利なPCサイトも用意観測データはAPIでも提供する 監視や分析に便利なPCサイトも用意(左)。観測データはAPIでも提供する(右)[クリックで拡大] 出所:ウェザーニューズ

 ソラテナProの用途としては、農業、建築/建設、ドローンの運用などの需要が高いものの、今後は工場/倉庫、教育、イベント/施設、電力、食品/アパレルなどさまざまな分野での活用に向けた提案を進めていく方針である。

「ソラテナPro」の用途 「ソラテナPro」の用途[クリックで拡大] 出所:オムロン
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