その他にも、生産フロアに画像型人感センサーや温湿度センサー、CO2センサーなど計230個程のセンサーを導入し、作業者の数や周辺環境に合わせて空調や照明の制御を行う。約8200m2の松阪事業所で使用するエネルギーの4分の1が空調に使われている。使用する空間を減らすことで、使用エネルギーを削減する。
既に血圧計の生産ラインでは、自動機の導入を含むさまざまな工程の見直しにより30%の省スペース化に成功しており、空調、照明に使うエネルギーも同様に30%減らすことが可能になる。工程間の距離が縮まったことで無駄な作業が減り、生産効率は1.3倍になっていることから、エネルギー生産性は1.85倍になり、商品1個当たりの温室効果ガス排出量は46%減らすことができる。
「面積生産性を高めるためにさまざまな分析をし、無駄なスペースを使っていたことが分かった。このラインでの事例をさらに横展開して、工場全体で成果を出していきたい」(曽根氏)
これらの改革を可能にしたのが、本格的な需要連動型生産への切り替えだ。従来は一定量をまとめて生産していた。それを市場での販売データを工場と直結させ、市場で売れた数量だけすぐ作り、出荷する方式に変えた。余分な商品を作らなくなるため、中間品や完成品の在庫が少なくなり、それらを保管するスペースも減らすことができる。
松阪事業所では需要連動型生産と生産ライン改善により、現在3棟に分散している生産ラインを将来的に1棟に集約する。使わなくなった後の2棟に関しては、部品在庫置き場や試作ラインの設置などの使い方を検討している。「やりたいことはいろいろある。われわれの新たな技術展開を考えていきたい」(鈴木氏)
部品調達における物流改革も進めている。中国など海外からの部品調達を国内調達に切り替え、部品の輸送距離を短縮する。国内調達率は7割を目指す。リードタイムが縮まることで、在庫保管用のスペースも縮小し、空調や照明のエネルギー消費を抑える。事業所内での資材移動動線を見直して移動距離も短くした。
松阪事業所は中国、ベトナム、ブラジル、イタリアにある生産拠点の中でもグローバル生産戦略拠点に当たる。取り組みはまだ始まったばかりであり、検証を進めながらさらなる効果の発揮を図る。「生産ラインごとの消費電力やエネルギー生産性まで見える化したのはオムロンの中でも松坂事業所が初めてだった。これから進める取り組みも多数ある。この成果をどこまで展開していくかは内部で検討していきたい」(鈴木氏)
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