NECは、少ない機械学習でロボットアームが約95%の作業成功率を達成できる「ロボット制御AI」や作業現場のエッジデバイスおよびクラウドに映像の分析処理を自動的に振り分けられモニタリングをスムーズにする「アプリケーションアウェアICT制御技術」を開発した。
NECは2023年3月3日、神奈川県川崎市のNEC玉川事業場内で、「NEC物流倉庫領域DXロボティクス説明会」を開き、物流倉庫の運営を効率化するソリューションとして、「ロボット制御AI」「アプリケーションアウェアICT制御技術」「リスクセンシティブ確立制御技術」を紹介した。
ロボット制御AIは、ロボットアーム向けの技術で、これまでと同様にロボット制御則を覚えさせるだけでなく、シミュレーションモデル「動作予測モデル」を事前に学習させる。動作予測モデルは、ある作業の実行に必要なロボット動作を入力した時に、その作業の成否をセンサーで取得したデータなどに基づき予測でき、同社では世界モデルと呼称されている。
NEC データサイエンス研究所 ディレクター 加美伸治氏は、「世界モデルとは、さまざまな意味で利用されている言葉だが、当社では、センサーが取得したデータから現実を理解し推論して、予測するシミュレーションモデルだと考えている」と説明した。
今回のAI(人工知能)には、学習状況に応じて、次に学習すべき物品の配置や作業などのパターンを設定する能動学習手法を取り入れることで、少ないパターン数で世界モデルとロボット制御則を構築することを可能とした。例えば、直方体の物体を箱の中に置く作業動作の生成が、数百パターン程度の機械学習で行え、事前学習の時間を数日に短縮できる。なお、同じケースでも、これまでの手法では数万パターン以上の事前学習が必要で、その学習に数カ月を要していたという。
ロボットアームがハンドリング作業を行う際には、ロボット制御AIが、あらかじめ学習した制御則で作業条件の特徴に合わせて複数の動作候補を生成し、この動作候補を実行に移す直前に、世界モデルで各動作候補の成否を予測し、成功率の高い動作候補を算出および実行する。これにより、現場で起こりうる作業条件を網羅的に学習せずとも、現場で使えるレベルの安定性である約95%の作業成功率を達成できることもシミュレーションで確認している。
会場では、ロボット制御AIを備えたロボットアームで、棚に陳列された製品を別の場所にある台に移したり、箱に入っている製品を空箱に移動させたりするデモンストレーションを披露した。箱に入っている製品を空箱に移動させる実演では、空箱の位置や製品の配置を変え、ロボット制御則で生成した各動作候補の成否を世界モデルで予測し、成功率の高い動作候補を算出して実施する流れも見せた。
今後は、物流倉庫や工場などのロボット作業でロボット制御AIの検証を進め、2024年度中の実用化を目指すという。
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