“柔らかい”導電性熱可塑性ウレタン樹脂、インク用顔料は分散材が不要に新機能材料展2023

大日精化工業は、カーボンナノチューブを用いた導電性熱可塑性ウレタン樹脂と分散剤が必要ないインクジェット印刷向けインク用顔料の開発を進めている。

» 2023年02月16日 10時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 大日精化工業は、「コンバーティングテクノロジー総合展2023」(2023年2月1〜3日、東京ビッグサイト)内の「新機能材料展2023」に出展し、カーボンナノチューブ(CNT)を用いた導電性熱可塑性ウレタン樹脂と易分散を実現する処理顔料を披露した。

少量の添加で高い導電性を発現する

 導電性熱可塑性ウレタン樹脂は、CNTを分散配置して、導電性を付与した熱可塑性のウレタン樹脂で、CNTは、カーボンブラック(CB)と比較して、少量の添加で高い導電性を発現する。CBを添加した導電性熱可塑性ウレタン樹脂よりも、伸長後の電気抵抗変化が少なく、射出成型や押出成形に対応し、従来の熱可塑性ウレタン樹脂と同等の加工が行える。応用展開として、今回の樹脂を活用し、熱可塑性エラストマー向けのマスターバッチとコンパウンドへの対応も想定している。

CNTを分散配置した導電性熱可塑性ウレタン樹脂(左)とCBを添加した導電性熱可塑性ウレタン樹脂(右)[クリックで拡大]
CNTを分散配置した導電性熱可塑性ウレタン樹脂の物性表[クリックで拡大]:大日精化工業
CNTを分散配置した導電性熱可塑性ウレタン樹脂の性能データ[クリックで拡大]:大日精化工業

 同社のブース担当者は、「CNTを配合した熱可塑性ウレタン樹脂は、CBを含有したウレタン樹脂と比べて、ウレタン樹脂の柔軟性を維持でき、加工しやすい。価格に関しては、CBよりCNTが高価なため、配合量が少なくてもケースバイケースになる」と話す。

 処理顔料は、インクジェット印刷(IJP)向けのインク用顔料で、独自の処理が施されており、溶媒のみで分散するため分散剤が必要ない他、多様な溶媒で分散でき、安定性に優れ、インク設計の自由度が高い。これにより、分散時間を短縮し、生産性向上と省エネルギー化に貢献するだけでなく、作成塗膜の発色性と光沢度に優れる。

今回の処理顔料を用いたインクジェット用インクで印刷した印刷物[クリックで拡大]:大日精化工業

 「当社独自のポリマーで処理した顔料で、短時間の解膠(かいこう)でも粗粒が非常に少なく、易分散性が良好だ。相溶性にも優れるため、任意の溶剤と今回の顔料を組み合わせた後に、機能性材料を添加して付加価値を付けられる。用途としては、サイン&ディスプレイ、ラベル、パッケージ、建材(壁紙、床材)、3Dプリント向けのインクジェットインクと塗料を想定している。用途に合わせて顔料のカスタマイズにも応じる。例えば、酸化チタンやジルコニア、シリカなどを用いた無機顔料へのカスタマイズも行える」(同社のブース担当者)。

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