水性インクジェットインクの需要増に対応、富士フイルムが色材工場を新設:工場ニュース
富士フイルムは2021年3月18日、水性インクジェットインク製品を製造する米国子会社であるFUJIFILM Imaging Colorants(以下、米国FFIC)に約20億円の投資を行い、水性顔料インクジェットインク用色材である顔料分散液の製造設備を新設すると発表した。2021年4月に着工し、2022年4月に稼働を開始する。
富士フイルムは2021年3月18日、水性インクジェットインク製品を製造する米国子会社であるFUJIFILM Imaging Colorants(以下、米国FFIC)に約20億円の投資を行い、水性顔料インクジェットインク用色材である顔料分散液の製造設備を新設すると発表した。2021年4月に着工し、2022年4月に稼働を開始する。
出典:富士フイルム
インクジェットは、短納期で1枚ごとに異なる印刷ができるバリアブル印刷が可能なため、商業出版印刷分野に加え、産業分野でも用途が拡大している。特に環境負荷が低く、食品用途での安全性も確保する水性顔料インクジェットインクへのニーズが高まっている。
こうした動きを受け、水性インクジェットインク製品の製造を行う米国FFICでは今回、水性顔料インクジェットインクの主要色材となる顔料分散液の製造設備を新設することで、色材からインク製品までの一貫製造体制を構築することを決めた。これにより、拡大する需要に対応する考えだ。
富士フイルムの顔料分散液は、顔料粒子に吸着する分散剤同士を化学結合させ架橋構造を形成する独自の「RxD(Reactive Dispersant)」技術を採用。分散剤が顔料から脱離しにくく、安定性の高い顔料分散を実現している。これにより、溶剤や機能性材料などが加わってもその影響を受けずに顔料分散の安定性が維持されるため、インク製造時に組み合わせる材料の選択肢の幅が大きく広がり、さまざまな分野のインク製造を可能としている。富士フイルムは、このRxD技術を用いた顔料分散液を自社インクだけでなく、他のインクメーカーにも供給しており、これまでに多くの水性顔料インクジェットインクに採用されている。
出典:富士フイルム
現在はこのRxD技術を用いた顔料分散液の開発と製造は、英国のFUJIFILM Imaging Colorantsのみで行っているが、今後の需要拡大を見据え、米国FFIC内にも生産工場を新設し、インク製品の一貫した製造を実現し、グローバル供給能力を増強する。
≫「工場ニュース」のバックナンバー
- COVID-19ワクチン候補原薬の量産強化、富士フイルム子会社が米国2拠点で
富士フイルムは2020年2月15日、バイオ医薬品の開発および製造受託会社(CDMO)であるFUJIFILM Diosynth Biotechnologies(以下、FDB)の米国テキサス拠点で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン候補の原薬製造を開始したことを発表した。FDBによるCOVID-19ワクチン候補原薬の製造はノースカロライナ拠点に続き2拠点目で、原薬量産を加速させる方針だ。
- 新型コロナ対策で富士フイルムが「アビガン」増産、政府の200万人分備蓄要請受け
富士フイルムは2020年4月15日、子会社である富士フイルム富山化学において新型コロナウイルス感染症に効果が期待される抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」を増産すると発表した。
- DNPと富士フイルムが取り組む産業のデジタル変革、その裏を支える参照モデルの意味
日本マイクロソフトは2019年6月25日、業種や用途に特化したデジタル変革を支援する「Microsoft Partner Network(MPN) for Industryパートナー プログラム」の開始を発表。合わせて、同パートナープログラムを利用し、業種に特化したデジタル変革のレファレンスアーキテクチャ(参照モデル)構築に取り組むDNPと富士フイルムがそれぞれの事例を発表した。
- スマート工場は“分断”が課題、カギは「データ取得」を前提としたツールの充実
工場のスマート化への取り組みは2020年も広がりを見せているが、成果を生み出せているところはまだまだ少ない状況だ。その中で、先行企業と停滞企業の“分断”が進んでいる。新型コロナウイルス感染症(COVID−19)対応なども含めて2021年もスマート工場化への取り組みは加速する見込みだが、この“分断”を解消するような動きが広がる見込みだ。
- スマートファクトリー化がなぜこれほど難しいのか、その整理の第一歩
インダストリー4.0やスマートファクトリー化が注目されてから既に5年以上が経過しています。積極的な取り組みを進める製造業がさまざまな実績を残していっているのにかかわらず、取り組みの意欲がすっかり下がってしまった企業も多く存在し2極化が進んでいるように感じています。そこであらためてスマートファクトリーについての考え方を整理し、分かりやすく紹介する。
- エッジは強く上位は緩く結ぶ、“真につながる”スマート工場への道筋が明確に
IoTやAIを活用したスマートファクトリー化への取り組みは広がりを見せている。ただ、スマート工場化の最初の一歩である「見える化」や、製造ラインの部分的な効率化に貢献する「部分最適」にとどまっており、「自律的に最適化した工場」などの実現はまだまだ遠い状況である。特にその前提となる「工場全体のつながる化」へのハードルは高く「道筋が見えない」と懸念する声も多い。そうした中で、2020年はようやく方向性が見えてきそうだ。キーワードは「下は強く、上は緩く結ぶ」である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.