公開鍵暗号搭載のセキュリティ回路で世界最小かつ最少の「SCU」が実用化へIoTセキュリティ

SCUは、「SIP/IoT社会に対応したサイバー・フィジカル・セキュリティシンポジウム2022」の展示会において、IoT末端ノードを守る極小かつ省電力のセキュア暗号ユニット「SCU」を披露した。

» 2023年02月09日 08時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 SCUは、2023年2月9日開催のイベント「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)/IoT社会に対応したサイバー・フィジカル・セキュリティシンポジウム2022」の展示会において、IoT(モノのインターネット)末端ノードを守る、極小かつ省電力のセキュア暗号ユニット「SCU(Secure Cryptographic Unit)」を披露する。40nmプロセスで製造したサンプルICや、同ICを搭載するイーサネットアダプターなどを用意しており、2023年夏には先行顧客によるPoC(概念実証)を始めたい考え。2024年度内には量産出荷をはじめ本格的な事業立ち上げに入る計画である。

セキュリティIC「SCU」(左)と評価ボード(右) セキュリティIC「SCU」(左)と評価ボード(右)[クリックで拡大]

 SCUは、SIPのプロジェクトである「IoT社会に対応したサイバー・フィジカル・セキュリティ」の下で開発が進められてきたセキュリティICである。公開鍵暗号として広く用いられているRSAよりも短い鍵長で同等の安全性を実現できるECDSA(楕円曲線暗号)を搭載するセキュリティ回路として「世界最小の回路規模、世界最少の消費電力、世界最速の処理速度」(SCU 代表取締役の植村泰佳氏)を個別に達成した技術を融合することで実現した。開発には、SCUの事業化を担う企業体として2022年8月に発足したSCU(前身は電子商取引安全技術研究組合)の他、横浜国立大学、東京大学、神戸大学、東北大学、奈良先端科学技術大学、三菱電機、産業技術総合研究所が参画している。

 PCやスマートフォン、高性能の組み込み機器向けのセキュリティICとしては「TPM(Trusted Platform Module)」が広く知られている。これに対してSCUは、マイコンなどで制御を行う性能の限られた組み込み機器やセンサー、アクチュエータなどのIoT末端ノードに最適な小型かつ低消費電力のセキュリティICとなっている。「IoT末端ノードにおけるセキュリティ対応では、より高速に処理できる共通鍵暗号のAESをさらに軽量化する手法などが検討されているがやはり公開鍵暗号を用いた方がより安全だ。SCUであれば、極小の組み込み機器でも高いレベルのセキュリティ機能を組み込める」(植村氏)。

 SCUそのものは、セキュア暗号ユニットであり半導体IPとしての提供も可能になっている。一方、今回展示したサンプルICは、SCUの早期実用化に向けたビジネスモデルとして検討している「SCU搭載コネクターシステム」向けのものとなる。SCU搭載コネクターシステムは、工場などで現在利用しているさまざまな機器はそのままに、機器間をつなげるイーサネットケーブルの間にSCUを搭載したアダプターを追加することでセキュリティを確保するというコンセプトになっている。このためサンプルICの外形寸法は、イーサネットの処理を行う回路を組み込んでいるため17mm角と少し大きめになっている。「セキュア暗号ユニット単体であればもっと小さくなる。われわれとしてはSCUの普及の形にこだわりはない。半導体IP、セキュリティIC、SCU搭載コネクターシステムのどれでも興味があればぜひ問い合わせてほしい」(植村氏)としている。

「SCU搭載コネクターシステム」向けのセキュリティアダプターの基板(左)と筐体イメージ(右) 「SCU搭載コネクターシステム」向けのセキュリティアダプターの基板(左)と筐体イメージ(右)[クリックで拡大]
アクチュエータとスイッチングハブの間にセキュリティアダプターを挟むことでセキュリティを確保する アクチュエータとスイッチングハブの間にセキュリティアダプターを挟むことでセキュリティを確保する[クリックで拡大]

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