安全パトロールをスマートグラスでリモート化、フジテックがエレベーター保守で:FAニュース
フジテックは2022年11月18日、技能伝承や生産性向上を目的にエレベーターのメンテナンスなどを行うフィールド業務で、スマートグラスを導入したと発表した。
フジテックは2022年11月18日、技能伝承や生産性向上を目的にエレベーターのメンテナンスなどを行うフィールド業務で、スマートグラス(メガネ型ウェアラブル端末)を導入したと発表した。
遠隔安全パトロールにおける現場作業の様子(左)と熟練技能者による遠隔指示の様子(右)[クリックで拡大] 出所:フジテック
フジテックではITを活用した技能伝承や教育の強化を図るために2015年からハンズフリーで作業を中継できるスマートグラスの導入を検討し、PoC(概念実証)を進めてきた。ただ、当時はスマートグラスのハードウェアとしての能力不足もあり、実運用を進めることができなかったという。ただ、最近のハードウェアの進化や周辺環境の整備などが進んだこともあり、活用効果が期待できるとし2022年5月から本格的に導入を開始した。
採用したハードウェアはVUZIXの「M400」で、片眼タイプでディスプレイの位置調整機能を持ち、作業視界の確保が容易である点、ヘルメットやメガネとの併用が可能で着脱が簡易である点などの条件から選定した。また、スマートグラスの導入に当たり、情報システム部門で現場の課題解決に直結する提案と導入トレーニング支援を行った。IT部門がさまざまな業務に入り込み、アプリケーションの企画と内製を行い、部門間連携を進める同社の特徴を生かした。
スマートグラスは主に、保守現場の監査である「安全パトロール」をリモート化するために活用している。現場で作業する技術者がスマートグラスを装着し、熟練技術者は、ビデオ通話を介してオフィスからリアルタイムに指導を行う。これにより熟練技術者は 移動時間を削減し、安全パトロールの頻度を増やした。「安全パトロールでの効果としては、移動時間2.5時間、待ち時間が30分、報告書作成の負荷が30分削減でき、5時間程度の削減効果があると考えている。これは1回当たり約70%の削減となり効果は大きい」(フジテック)としている。フジテックでは、これらの成果を基に、故障対応や現場支援の実測調査などの業務支援へ用途を広げていく考えだとしている。
≫「FAニュース」のバックナンバー
- 製造業のIoT活用、フジテックと日置電機とパナソニックCNS社はどうしているのか
ソラコムの年次ユーザーイベント「Discovery 2018」において、「製造業におけるIoT活用」をテーマとしたパネルディスカッションが行われた。登壇したのは、フジテックの友岡賢二氏、日置電機の久保田訓久氏、パナソニック コネクティッドソリューションズ(CNS)社 の山崎徹氏である。
- 産業用スマートグラスはIT/OTの「結節点」になれるか、米国発新興企業の展望
現在、産業用スマートグラスは国内外の多くのメーカーが展開している。その中で着実に国内販売実績を積み上げている企業がRealWearだ。2015年に米国で創業したスタートアップで、同社のスマートグラスは全世界で約5万台を超える販売実績を持っている。ただ、国内市場参入当初は顧客に導入を渋られていた時期もあったという。そこから販売台数を伸ばした要因と、産業用スマートグラス市場の今後の展望などを聞いた。
- 故障予知は前提、“真の予兆保全”を実現するために必要になるもの
2017年はIoTやAI技術の進展により、大型機械や設備の故障予知や予兆保全への取り組みが加速した1年となった。2018年は故障予知などを前提とした、センシングやデータ管理などが進み、予兆保全に関する各種製品開発やソリューションが数多く登場する見込みだ。
- ウェアラブル端末とモノのインターネットは「現場」の救世主となるか?【前編】
製造現場や保守現場、建築現場など、多くの業種においてさまざまな「現場」が存在しているが、その現場が今“悲鳴”を上げていることをご存じだろうか。その救世主として今急速に注目を浴び始めたのが、ウェアラブル端末とIoT(モノのインターネット)だ。本稿では、前編で「現場」の現状となぜウェアラブル端末に注目が集まるのかについて、後編でICTを活用した「現場」の将来像について解説する。
- ウェアラブル端末とモノのインターネットは「現場」の救世主となるか?【後編】
製造現場や保守現場、建築現場など、多くの「現場」の救世主として注目を集めるウェアラブル端末とIoT(モノのインターネット)。前編では、ウェアラブル端末とIoTの現場活用における期待と、それを集めるようになった背景を解説した。今回の後編はこれらを活用した現場における先進事例と将来像について紹介する。
- ウェアラブルデバイスが変革する生産現場・保守現場の未来像
「第25回 設計・製造ソリューション展(DMS2014)」では、ウェアラブルデバイスの活用により生産や保守の“現場”を革新するさまざまなソリューションが出展された。「現場×ウェアラブル」で何が起ころうとしているのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.