ジェイテクトが、リチウムイオンキャパシタの提案に力を入れている。現在新たに打ち出しているのは、リチウムイオン電池や燃料電池とリチウムイオンキャパシタを並列接続するメリットだ。
ジェイテクトが、リチウムイオンキャパシタの提案に力を入れている。
当初は、電動パワーステアリング(EPS)のアシストの出力を駐車時などに瞬間的に増やすための補助電源を用途に挙げていた。SUVやピックアップトラックのような大型の乗用車では、カーブが続く道路で何度もハンドルを切ったり、駐車時に据え切りを行ったりすると、EPSのアシストの出力が低下する場合があるためだ。加えて、自動運転車のフェイルセーフ用として、故障時に最低限のEPSのアシストを継続するためのバックアップ電源など車載向けで用途を模索してきた。
車載用以外では、建設機械や農業機械でも可能性を見出した。建機や農機はサイズや重量が自動車よりも大きく、電動化するにはリチウムイオン電池ではカバーしきれない瞬間的な出力が求められる。低温でも動作できる独自の特性は航空宇宙分野でも生きると見込んでいる。
現在新たに打ち出しているのは、リチウムイオン電池や燃料電池とリチウムイオンキャパシタを並列接続するメリットだ。モーターの駆動で実験すると、リチウムイオン電池単体では駆動時間が長いが回転数に限界があり、リチウムイオンキャパシタのみでは回転数を引き上げられるが駆動時間はリチウムイオン電池に劣る。両者を並列接続すれば、リチウムイオン電池単体と比べて回転数を増しながら、駆動時間も確保できる。
リチウムイオンキャパシタを並列接続することで、メインのバッテリーの寿命を延ばす効果も得られる。リチウムイオン電池は長寿命化が図られているものの、EV(電気自動車)の駆動用バッテリーを載せ替えるとなると現状では費用は高額だ。また、バッテリーのリユースやリサイクルでもコストや事業性に課題が残っており、電動モビリティが最初に載せたバッテリーを長く使えることは、ライフサイクルでみてもコスト面のメリットがとても大きい。
ジェイテクトの伊賀試験場(三重県伊賀市)で、駆動用バッテリーにリチウムイオンキャパシタを並列接続した超小型EV「コムス」(トヨタ車体製)に試乗した。
コムスの駆動用バッテリーは鉛蓄電池だ。実験のため、内部抵抗が新品の2倍になるなど劣化させており、リチウムイオンキャパシタなしで急な坂を登ると途中でバッテリー残量がないことを示す警報音が鳴る。登坂中は劣化のため電圧が急に低下し、十分な電流を得られないことから、システムが「バッテリー残量がない」と判断するためだ。説明員から「警報音を無視してアクセルを踏み続ければ登れる」と事前に聞いていても、不安に感じる走りだった。
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