自宅から目的地までの移動の単位(トリップ)ごとの内容も分析した。実証実験の期間中で4294トリップが発生した。ここから目的地が幾つあるか、目的地までの距離がどのくらいか、メインの目的地以外の立ち寄り先が幾つあったかなどを検証した結果、トリップが8種類に分類できることが分かった。
その内訳は、(1)長距離通学や遠方への外出(2)1度で多くの目的地に行く外出(3)キャンパス間の移動とアルバイトや買い物の立ち寄り(4)部活、アルバイト、鉄道の駅までの移動(5)中距離の通学と買い物やカフェなどの立ち寄り(6)中距離の通学(7)近距離の通学と買い物への立ち寄り(8)近距離通学、近距離の買い物、となっている。
このうち、特定のトリップが多いユーザー、さまざまなトリップをこなすユーザー、1回のトリップで複数の場所に立ち寄るユーザー、1つの目的地にしか行かないユーザーなどさまざまなタイプがみられた。さまざまなトリップをこなすユーザーは、バッテリー交換ステーションをうまく使い分ける傾向があることが分かった。
3カ月を1期とする実証実験において、電動二輪車の使い方やトリップに変化があったか分析したところ、変化の有無で半々に分かれた。また、特定のトリップが多く決まった使い方に慣れたユーザーは、立ち寄り先の数を変えない傾向がみられた。こうした使い方の傾向を把握することは、バッテリー交換ステーションの設置場所の選定にも役立つ。
eやんOSAKAの参加者に生活の変化をヒアリングすると、「通学時間が短くなったことで研究室に滞在する時間が増えた」「自転車と比べて乗るときの服装や荷物の多さの影響を受けにくくなった」「運転が楽しくなり、二輪車を使ったアルバイトを始めた」「道に迷ったことで目的地を変更し、新たな体験ができた」「バッテリー残量や走行できる距離を基に工夫しながら走れるようになった」といった声があった。
電動二輪車に対する評価を尋ねると、「便利」「興味が増した」「買いたい」という回答が大多数を占めた。バッテリー交換式での利用形態について尋ねると、24時間無人で交換できることなど利便性に対する満足度は高かったが、走行距離については「満足」(46%)、「不満」(27%)、「どちらとも言えない」(28%)と回答が分かれた。「気温によってはいつも通りに走っても電力消費が早くて焦った」という声が寄せられた。また、バッテリーを搭載することで、収納スペースが減ることなどへの不満も寄せられた。
電動で静粛性が高いため夜間でも利用しやすいことや、加速性能や滑らかな走行感覚も好評だった。また、二輪車用の駐車場を見つけにくいことや、交通事故を起こす/巻き込まれることへの懸念など、電動化に関係なく二輪車全般に共通する懸念についても声が上がった。
ヤマハ発動機 代表取締役社長の日高祥博氏は「バッテリー交換ステーションの普及や立地の密度向上によって、“電欠”への不安を解消できる手応えを得た。インフラの普及次第で、二輪車の電動化を進められるのではないか。また、二輪車メーカー各社でバッテリー交換式の電動二輪車を市場投入し、選択肢を増やしていくことも必要だ。ヤマハ発動機ではE-Vinoという電動二輪車を持っているが、バッテリーを除けばガソリンの二輪車よりも安い。バッテリーを交換式にして必要に応じて利用できるようにすることで、ガソリン車よりも安価な電動車を展開できる」と語った。
バッテリー交換ステーションごとの利用回数を見ると、大学内の2カ所が最も多かった。ローソンに設置したステーションは、主要道路沿いに立地する店舗ほど利用実績が多かった。
eやんOSAKAの参加者130人の中には、頻繁にバッテリーを交換する利用者とそうでない利用者がいたが、ステーションでのバッテリー交換を通じて使用回数がならされたという。これにより、極端に劣化が進むバッテリーが生まれにくくなるとしている。
実証実験の参加者を大学の教職員や学生という特敵のコミュニティーに限定したことで、安全運転講習の受講義務化や情報提供などがしやすいことが確認された。また、参加者の価値観や受容性、行動の変化を検出しやすいというメリットもあった。また、コミュニティー内での使い方や体験などが共有されやすいことから、使い方を共創したり、利用者を呼び込んだりする効果も期待できるとしている。
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