古河電気工業は2022年6月22日、パワー半導体向け無酸素銅条「GOFC(Grain Growth Control Oxygen Free Copper)」の板厚の変動を従来比1/2に低減したと発表した。板厚は0.25〜2mmに対応する。パワー半導体の歩留まり向上が期待される。
古河電気工業(以下、古河電工)は2022年6月22日、オンラインで記者会見を開き、パワー半導体向け無酸素銅条「GOFC(Grain Growth Control Oxygen Free Copper)」の板厚の変動を従来比2分の1に低減したと発表した。
GOFCの仕上げ圧延工程に改良を加えた。これまでもリードフレーム向け製品にはX線厚み計を用いて板厚の変動を抑えてきたが、より板厚の厚いGOFCでもX線で高精度に計測できる技術を開発した。従来、板厚0.8mmで14μm程のばらつき幅があったが、8〜6μmまで改善した。パワー半導体を基板に搭載したモジュール製品の歩留まり向上が期待される。板厚は0.25〜2mmに対応する。
パワー半導体の基板はセラミックスの両面に無酸素銅板を貼り付けた構造をしている。両面の銅板の厚さが異なると表裏面への熱膨張、収縮の影響に差異が生じ、銅板貼り付け後の基板に反りが発生してしまう。
古河電工 電装エレクトロニクス材料統括部門 銅条・高機能材事業部門 主幹の三原邦照氏は「セラミックス基板が曲がると半導体のチップが剥離しやすくなり、セラミックス自身にもクラックが発生する。パワー半導体モジュールの信頼性や寿命の低下につながるため、板厚のばらつきを小さくしてほしいという顧客の要望から今回の取り組みがスタートした」と語る。
電圧や周波数の変換などに使われるパワー半導体は、カーボンニュートラルに向けた自動車の電動化や再生可能エネルギーの普及に伴い、市場規模の大幅な拡大が見込まれている。セラミックス基板の素材は従来のアルミナから、放熱性や絶縁性が高い窒化ケイ素や窒化アルミの使用が広がっている。
GOFCは、窒化ケイ素や窒化アルミをベースとする絶縁基板の製造法であるAMB(Active Metal Brazing:活性ロウ付け法)において、接合剤となるチタンなどの活性金属とともに用いられる。AMBでは基板温度が750〜800℃に達する。GOFCは約800℃の高温熱処理後でも結晶粒径を小さく抑えられているため、絶縁基板とパワー半導体を接合するはんだ内部のボイド(気泡)のSAT(超音波顕微鏡)による検出感度が高いこともメリットだ。需要は拡大しており、古河電工でも2022年度下期のGOFC生産量は月産50〜100トンの見込みで、同年度の生産量は2020年度比倍増を目指している。
顧客からはリサイクル推進の要望も出ているという。GOFCは高純度な無酸素銅でリサイクル材料としても活用できる。ただ現状は、外部での分離、選別を経て、市中くずに回ったものを精錬して再利用している。
三原氏は「サーキュラーエコノミー(循環型経済)の観点から、もっと効率よく回収していきたいという要求を受けている。弊社の日光事業所は、子会社の古河日光発電が作る水力発電で100%動いている。さらに日光事業所を活用してバリューチェーン全体のCO2削減に取り組んでいる」と話す。
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