将来的な市場も大きい。ロールス・ロイスがローランドベルガーと共同で行った調査では、2050年までにアジア太平洋地域で世界の半数以上にのぼる8万2500機の次世代エアモビリティが運用され、369億ドル(約4兆3000億円)の営業収益がもたらされると試算、日本だけで2050年までに1万6400機の運用、143億ドル(約1兆6000億円)の営業収益を生み出すと見込む。
「この新しい分野に関して、スタートアップや既存の企業など200社以上が参入している。市場規模、事業機会の観点から極めて魅力的な市場と考えている」(パー氏)。
機体の電動システムだけではなく、UAMの発着場となるバーティポートにも機会を見いだす。「特に投資をしていく分野としては充電設備だ。すでにわれわれはmtuブランドでコンテナ型蓄電池をデータセンターなどに提供している。そういったコンテナ型蓄電池から航空機へ直接充電できるようにする開発などを進める。エコシステムの中心としての役割を果たしていく」(パー氏)。
一方で、大陸間をまたぐような長距離を飛ぶ航空機の本格的な電動化はまだ先とみる。ロールス・ロイス ジャパン 代表取締役社長の神永晋氏は「現状は電池、モーターなどがまだ重たく、距離が長くなるほどハンディキャップが大きくなる。(完全な電動化は)当面実現できないと思っている。そのため、燃料をネットゼロにする持続可能な航空燃料(SAF)が必要になる。ただ、制御やポンプなどシステム全体については航空機の電動化はより進んでいく」とした。パー氏も「長距離の航空機に関してもネットゼロ実現を目指している。そのためにSAFを最大限に活用する。SAFの製造で発生するCO2の削減もパートナーと取り組む。また、水素エンジンや燃料電池の活用も鍵になる」と語る。
航空機エンジンは化石燃料を消費し、CO2を大量に排出する代表例として挙げられる。コロナ禍以前は航空機による移動について、“Flight Shame(飛び恥)”という言葉も生まれた。
神永氏は「われわれは、技術は社会問題を解決するための道具で、技術を使うことでよりよい社会を作ることができると信じている。自動車、航空機、あらゆるものが動力を必要としている。その動力を最先端の技術を活用して、よりクリーンで安全、経済的なソリューションを提供するのが使命と考える。脱炭素が非常に難しい分野だが、そこに直接携わっているというユニークなポジションを好機として、直接的に脱炭素ができる製品開発に取り組んでいる」と語った。
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