自動車メーカー好業績の裏で、伸び悩んだ生産台数自動車メーカー生産動向(2/4 ページ)

» 2022年05月27日 06時00分 公開
[MONOist]

トヨタ

 メーカー別に見ると、トヨタの2021年度のグローバル生産台数は前年度比4.7%増の856万9549台と3年ぶりに前年実績を上回った。世界販売も過去2番目の水準と好調に推移した。ただ、生産台数自体は2019年度との比較では2.0%減にとどまった。

 このうち海外生産は前年度比10.3%増の580万8706台と5年ぶりにプラスへ転じた。コロナ禍前の2019年度との比較でも6.8%増やしており、好調な様子が伺える。

 地域別では、主力の北米が前年度比7.8%増の177万5658台と回復し、5年ぶりにプラスへ転じた。東南アジアから北米への部品供給の影響はあったが、前年度がコロナ禍で生産停止を余儀なくされたことでプラスを確保した。国別では米国が同13.3%増、メキシコが同30.0%増と伸長したものの、カナダは同13.2%減だった。中南米は同57.8%増と大きく回復。欧州も部品供給難の影響を受けたが、前年のロックダウンによる生産停止の反動増で同1.3%増となった。

 アジアは前年度比9.5%増の286万1378台と2年連続のプラスだ。前年のロックダウンの影響が大きかったインドネシアが同2倍、インドが同40.2%増、フィリピンが同25.9%増、主力のタイも同20.7%増と伸長した。東南アジアでは唯一ベトナムがロックダウンの影響で同27.3%減と大幅に減らした。東南アジアが回復傾向を示した一方で中国は、2020年度がいち早く回復した反動などにより同1.1%減の169万8049台だった。ただ、中国で生産する日系メーカー5社の中では唯一の1桁パーセント減に踏みとどまった。

 一方、国内生産は前年度比5.4%減の276万843台と2年連続のマイナスだ。4〜6月は、2020年がCOVID-19感染拡大により稼働調整を実施していたことや、他社に比べて半導体不足の影響を抑えられたことで、高い伸びを維持したものの、夏ごろから東南アジアからの部品調達難の影響が深刻化。9〜10月は前年比で半減まで落ち込むなど厳しい状況に陥った。年末から挽回生産を本格化したが、1月はオミクロン株の感染拡大により再度稼働停止を余儀なくされ、前年同月比32.2%減の大幅減となった。

 3月単月では、国内外で明暗が分かれている。これは3月に発生した宮城・福島沖地震でサプライヤーが被災した他、系列サプライヤーの小島プレス工業に対するサイバー攻撃などにより、国内拠点で稼働停止が相次いだため。その結果、国内生産は前年同月比15.8%減の26万1759台と大きく落ち込み、2カ月ぶりのマイナスとなった。

 国内が低迷する一方で海外生産は好調で、前年同月比13.6%増の60万5016台と2カ月連続で増加し、3月としては過去最高を更新した。主力の北米は、前年3月が寒波による稼働停止を実施した反動もあり、同11.2%増と伸長した。アジアもインドネシアやタイの市場回復に加えて、中国が新ラインの追加などによる能力増強などで同13.8%増と日系5社の中で唯一プラスを確保。アジアトータルでは同18.4%増となった。欧州は部品供給不足の影響で同4.8%減だった。

 海外生産がけん引した結果、3月のグローバル生産は前年同月比2.8%増の86万6775台と2カ月連続のプラス。3月として過去最高の台数を記録するとともに、8社のグローバル生産で唯一前年実績を上回った。

ダイハツ

 グループのダイハツも回復傾向を示している。2021年度のグローバル生産は、前年度比8.8%増の151万7745台と2年ぶりに前年実績を上回った。ただ、2019年度との比較では1割強の減少であり、本格回復とは言い難い。けん引役は海外生産で、同41.8%増の67万7000台と3年ぶりにプラスへ転じた。特にインドネシアが前年のロックダウンに対する反動増で前年度比約2倍と大幅な伸びを見せた。一方、マレーシアは変異株の感染拡大によるロックダウンで、6月1日から8月中旬まで工場の稼働停止を余儀なくされるなど伸び悩んだ。

 国内生産は前年度比8.4%減の84万745台と2年連続で減少した。軽自動車、登録車ともに振るわなかった。半導体不足で6〜7月に稼働停止日を設けた他、ベトナムとマレーシアからの部品供給が滞ったことで8月下旬からは大規模な生産停止に追い込まれた。

 国内生産は9月に前年同月比68.2%減をピークに、10月も同44.2%減と低迷した。11月には前年に発生した樹脂バックドアなどの調達先であるエイエフティーの塗装ラインでの火災による生産停止の反動増でプラスとなったものの、1月はオミクロン株の感染拡大により再度稼働停止を余儀なくされるなど、刻々と状況が変化している。

 3月単月も国内生産は前年同月比21.3%減の7万9671台と2カ月ぶりのマイナスだった。半導体不足に加えて、宮城・福島沖地震、さらに小島プレス工業に対するサイバー攻撃など、部品供給網の混乱で稼働停止に追い込まれた。さらに4月以降は上海のロックダウンによる稼働停止が相次いでおり、国内生産の正常化にはしばらく時間がかかる見通しだ。

 海外生産は前年同月比15.8%増の7万3756台と8カ月連続のプラスとなり、3月として過去最高を更新した。マレーシアは伸び悩んだものの、インドネシアは前年の反動増が続いており、同26.0%増と3月の過去最高を記録した。それでも国内生産の低迷をカバーするには至らず、3月の世界生産は同7.0%減の15万3427台と5カ月ぶりにマイナスへ転じた。

スズキ

 スズキも2021年度は回復傾向を示した。グローバル生産台数は、前年度比6.4%増の282万1884台と3年ぶりにプラスへ転じた。ただ、2019年度との比較では4.9%減となった。このうち同社生産の半数以上を占めるインドは、前年がCOVID-19感染拡大によるロックダウンなどを実施していた反動増により、前年比15.2%増の165万8586台と3年ぶりのプラス。その結果、海外生産も同15.2%増の198万2353台と3年ぶりに増加した。

 海外生産以上に部品供給難の影響を受けたのが国内生産だ。2021年度は、前年度比9.7%減の83万9531台と3年連続で減少した。前年がCOVID-19感染拡大による生産調整や完成検査問題対策で工場のラインスピードを落としていたため、生産能力を考慮するとかなり低い水準であり、半導体不足などの深刻さが伺える。

 部品供給が不足する状況は続いており、3月単月のグローバル生産台数は前年同月比7.4%減の27万9454台と2カ月ぶりの減少だった。中でも国内生産への影響が大きく、同12.9%減の8万4227台と2カ月ぶりのマイナス。海外生産も、同4.9%減の19万5227台と3カ月ぶりに減少。インド生産は同5.3%減で3カ月ぶりのマイナスだった。

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