「流通経路の多方向化」では、Eコマースの登場以前は一方向で回っていたサプライチェーンについて、Eコマースが拡大した現在は全てのポイントで在庫把握しなければならなくなっている。
中でも大きな課題になっているのは品切れへの対応である。流通経路が多方向化することで、購入客はいつでもどこでも商品を見つけて購入できると考えているが、実際には店舗の来店客の71%は買いに来た商品を手にしないまま店を出ており、その半数は理由として品切れを挙げている。
実際に小売業者の経営陣、店舗従業員とも品切れに大きな課題を感じている。品切れを常時リアルタイムで可視化することは非常に難しいと捉えている一方で、その対策のために優れた在庫管理ツールの導入を求める声は2020年調査時よりも大きく増えた。店舗従業員が業務中に最も失望することの第1位は品切れであり、小売業者の経営陣が購買客と店舗従業員、双方の満足を高めるにも優れた在庫管理ツールが必要になっているといえるだろう。
「購買方法の多様化」では、購買方法と併せて求められる返品プロセスの改善を課題として挙げた。実際に、購買客の8割がオンラインであろうと実店舗であろうと、購入したところから簡単に返品できる方がよいと考えており、オンラインで購入した商品を実店舗で簡単返品できるかどうかを購入の判断材料にする場合もあるという。
また、自社のオンライン返品プロセスについて、小売業者の経営陣の90%が満足しているのに対し、現場で返品プロセスに携わる店舗従業員の満足は70%にとどまっており、ギャップが生じている。店頭返品では、返品を頻繁に繰り返す顧客、返品物流の管理、店内に返品専用のエリアがないといった課題に直面しているのだ。「流通経路が多方向化する中で、購入とは逆のプロセスで進む返品プロセスを改善するのは困難だ」(古川氏)という。
ゼブラ・テクノロジーズとしては、これら小売業の問題を解決するために最新テクノロジーの導入が不可欠だと考えている。店舗従業員も、ロボットに取って代わられるという不安を抱えているものの、便利なテクノロジーの提供によって満足度が向上するという調査結果が出ている。
最新のテクノロジーのうち、店舗従業員が使用するモバイルデバイスについては、1年以内の導入が80%、5年以内の導入が95%以上となっており、確実に浸透していきそうだ。また、指に装着するリングスキャナーなどのウェアラブルデバイスによって購買客の満足度が向上すると感じている店舗従業員は前年比7ポイント増の69%に達しているという。
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