ADASや自動運転に不可欠な車載ネットワークの高速化、今後の進展は車載ソフトウェア(3/4 ページ)

» 2022年02月25日 06時00分 公開

物理層テストと相互運用性

 トランシーバーは、熱、振動、静電放電(ESD)およびEMIを含む、過酷な自動車環境で動作しなければならないデリケートなデバイスであり、インターオペラビリティ(相互運用性)は重要な問題です。

 3つの異なる領域のテストに分割して説明していきます。1つ目はトランスミッションで、送信されたものが期待通りであるか。2つ目がレシーバー機能とデバイスの間(ゲートウェイ、モジュール、スイッチ、物理層)で正しい信号をどれだけ確実に受信できるか。最後の3つ目が、リンクセグメントと呼ばれるトランシーバー間のパッシブインターコネクトのパフォーマンスについてです。物理層の検証には、これら3つの要素全てが含まれます。

 これら全てのテストの最終目標は、異なるデバイスサプライヤー間における相互運用性の確認です。1台のクルマに貢献するサプライヤーは100社以上あり、仕様を作成する標準化団体もあります。これらのアプリケーションは、データの整合性が維持されていることを確認するために、既知の規格に照らして評価します。

トランスミッターのテスト

 トランスミッター(送信機)の場合、信号特性が良好であることを確認します。そのため、レシーバーとして機能するツール(この場合はオシロスコープ)を使用します。被試験デバイス(DUT)は一連の既知の状態に置かれ、レシーバーは信号が「有効」であることを確認します。

図3:バックモニターに干渉縞が表示される例[クリックで拡大] 出所:キーサイト・テクノロジー

 図3は、バックモニターの表示に干渉縞が表示される例です。この縞模様は、伝送中のギャップ、つまりドロップしたパケットに相当します。1本でも2本でも画像を見ることはできますが、後ろに子どもがいるときに画像が黒く点滅するようでは困ります。

 カメラはとあるサプライヤーのもの、ケーブルは別のサプライヤーのもの、信号をルーティングするスイッチ、データを処理するGPU、ECU、そして最終的に車を停止するブレーキも同じです。これらは異なるサプライヤーが製造し、連携する必要があるため、相互運用性の重要性が強調されているのです。

 さらに、データレートはCANの100倍、1000倍の速さになり、高速信号の場合はさらに複雑化し、変調方式もますます複雑になっています。CANのような旧世代の規格ではNRZ(非ゼロ復帰)やPAM-2(2値パルス振幅変調)を使用していますが、車載イーサネットや車載SerDesではPAM-3やPAM-4を使用しています。

 そのため、これらのTxテストでは、次のようなデータの整合性も確認する必要があります。

  • ジッタテスト:クロックエラーがトランスミッターのジッタを引き起こす可能性があるため
  • パワースペクトル密度:プリント基板の配線部分は高速でアンテナとして動作するので、周波数範囲にわたるノイズ測定(高速フーリエ変換(FFT)またはスペクトラムアナライザーを使用)が必要
  • リニアリティ(線形性)テスト:反射はトランスミッターエラーやビットエラーの原因となるため、反射による歪みを調べる

 最終的には、データが放射、反射、減衰を起こさず、他の回路に干渉しないことを確認する必要があります。これらのテストに合格しない場合、レシーバーでフレームがドロップする他、先ほど見たようにディスプレイに干渉縞が表示されるシンボルやパケットエラーが発生します。

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