WSL2はバージョン21H2の全てのWindows IoT Enterpriseで使用可能であり、Windows上でELF64形式のLinuxバイナリを実行できるようにする、Windows Subsystem for Linuxの新しいバージョンです(図2)。仮想マシン上にLinuxを展開するのに比べCPU、メモリおよびストレージの消費を抑えることができます。
インストールも非常に簡単になり、インターネットに接続された環境であればコマンド“wsl --install”だけでインストールが完了します。さらに、Windows 11(IoT Enterprise)上では、プレビュー版という位置付けではあるもののWSLg(Windows Subsystem for Linux GUI)によりGUIアプリも動作します。私自身もWSLgの動作を幾つか試してみましたが、物理環境と遜色なくGUIアプリは軽快に動作しますし、Windows 11のスタートメニューから直接Linuxアプリが起動できるのはなんだか不思議な感覚に陥りました。
1つの機器内でWindowsバイナリとLinuxバイナリを同時に動かす、両者間でファイル共有を行うことなどが容易に実現できるため、IoT機器、組み込み機器における利用シーンが広がる可能性を感じます。
IoT機器、組み込み機器はパーソナルコンピュータとは違い、何か固定的な目的をもって使用されます。このような機器においては、たとえどのようなユーザーが使用した場合でも常に一貫したユーザーエクスペリエンス、安定した動作の提供が重視される傾向が強く、これらの実現をサポートするロックダウン機能が用意されています(表1)。
Windows 10 IoT Enterprise 2019 LTSC | Windows 10 IoT Enterprise | Windows 11 IoT Enterprise | Windows 10 IoT Enterprise 2021 LTSC |
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Shell Launcher Shell Launcher V2 |
✔ | 21H2で制限事項あり | ✔ |
カスタムログオン | ✔ | ✔ | ✔ |
キーボードフィルター | ✔ | ✔ | ✔ |
ブランドではないブート | ✔ | ✔ | ✔ |
統合書き込みフィルター | 21H2で追加機能あり | 21H2で追加機能あり | 21H2で追加機能あり |
表1 Windows IoT Enterpriseで利用可能なロックダウン機能 |
基本的にロックダウン機能はバージョン1809(Windows 10 IoT Enterprise 2019 LTSC)から変更なく引き続き使用可能ですので全体像は前回連載の解説記事を参照いただくとして、バージョン21H2では2つのロックダウン機能について変更点があります。
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