自動車業界向け新機能として、自動車の電動化に関連した流体解析関連のアップデート内容について紹介。Ansys 2022 R1では、汎用(はんよう)熱流体解析ソフトウェア「Ansys Fluent」の強化ポイントとして、電動化の核となるバッテリーソリューション、空力ソリューション、熱解析ソリューションの3つの拡充が挙げられるという。
これまでもバッテリーソリューションを提供してきたAnsys Fluentだが、今回新たにバッテリーの劣化モデルを搭載し、1Dレベルで実験のフィッティングを行った後、実運転条件においてどのように劣化し、バッテリー容量の低下が進んでいくかの予測が可能になった。また、ユーザビリティの改善に寄与する「Pack Builder Tool」が新たに実装され、複雑なパック構造の自動構築を支援。併せて「ROM(Reduced Order Model) Tool Kit」が新たに用意され、従来準備に手間の掛かっていたROM作成用学習データの生成を自動化する。さらに、SVD ROMによりバッテリー温度分布を3次元の解析なしに表示できるようになった。
空力ソリューションでは、乱流現象をより精度良く解くことが重要となるが、一般的に用いられるLES(Large Eddy Simulation)モデルでは計算コストが高く、解析に時間を要する。そのため、簡易的なモデルで評価が行われることもあるが、この場合、乱流モデルのチューニングなどが必要になる。今回のアップデートでは、この乱流モデルに対して、最適化手法の1つである「Adjointソルバ」と機械学習の1つであるニューラルネットワークによる学習を合わせてチューニングを行う機能が搭載された。その他、「Fluent Multi-GPUソルバ」による定常CFD(数値流体力学)解析の高速解法が提供され、ハードウェアコストの削減と電力消費効率の向上が可能になるという。
熱解析ソリューションに関しては、近年、電動化に伴う“機電一体”の動きが加速する中、プリント基板(PCB)への熱の影響が無視できないものになっている。そこで今回のアップデートでは、PCBのアドオンモデルにより配線情報などを「Ansys Icepak」経由でAnsys Fluentに取り込んで電子機器の冷却解析を実行する機能が追加されている。これにより、これまで対応が難しかった物理モデルの利用や「Fluent meshing」を用いての複雑な構造物へのメッシングが行えるようになった。
さらに、自動運転支援に関するアップデートについては、同社の新たなパートナーシップとなるIPG Automotiveとのコラボレーション機能が挙げられる。
具体的には、任意のシナリオを作成し、その挙動をシミュレーションできるIPG Automotiveの「CarMaker」に同期して、物理ベースのセンサーシミュレーションソフトウェア「Ansys AVxcelerate」を実行できるようになり、カメラ/レーダー/LiDAR(Light Detection and Ranging:ライダー)のリアルタイムシミュレーションが可能となる。また、CarMaker側のユーザーインタフェース(UI)からAVxcelerateセンサーを設定できるようになっている他、物理ベースシミュレーションに対応した3D環境のAnsysライブラリをCarMakerで利用できるようにした。
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