本連載では、ここ数年自動車産業をけん引してきた「CASE」を将来型の「Beyond CASE」として再定義するとともに、近視眼的になりがちな脱ICE(内燃機関)やテクノロジー活用の本質をグリーンモビリティの観点から全12回で解説する。
現在、脱炭素の議論が世界中で加速している。自動車産業もその大きな波にもまれており、日々その議論は尽きない。ただ、グローバル、クロスセクター(産業)などの観点から、どの取り組みも部分最適にとどまり、新たな潮流や事業に成り得るような、国や産業を超えた全体最適かつサステナブルな視点になっていない。
本連載では、ここ数年自動車産業をけん引してきた「CASE」を将来型の「Beyond CASE」として再定義するとともに、近視眼的になりがちな脱ICE(内燃機関)やテクノロジー活用の本質をグリーンモビリティの観点から下記の通り全12回で解説する。
CASEは、Connected(コネクテッド=ネットワークへ常時接続したつながるクルマ)、Autonomous(自動運転)、Shared&Services(シェアリングとサービス)、Electric(電動化)の頭文字を取って、自動車業界のコンセプトを表した造語であり、 もともと2017年にダイムラー(Daimler)の中長期ビジョンとして初めて提示された言葉である。
これまでは、Connectedであればテレマティクスサービスによるマネタイズ、Electricであればパワートレインのラインアップによるユーザーの囲い込みなど、C、A、S、Eのそれぞれが個別の自動車業界トレンドとして対応されることが多かった。
しかし、「気候変動に代表される社会課題」「米中経済戦争で改めて表層化したエコノミック・ステイトクラフト(経済をテコに地政学的国益を追求する手段)など新たな経済政策の在り方」「テクノロジーの驚異的な進展」「Z世代を中心とする価値観の変化」などが、国や地域、産業、個々の生活に直結する時代に、CASEの1領域で対応できることは皆無といっても過言ではない。
例えば、「より社会コスト負担の低い自動車利用の在り方を考える社会」を是とし、若い世代を中心に世論形成や選択がなされることにより、クルマの所有が利用へシフトするとしよう。これは自動車利用が減ることを必ずしも意味していない。
個人から事業者へ、乗用車から商用車へ需要が移る中で、より利用情報、車両情報、移動情報、運行情報、インフラ情報などの連携・集約・最適活用のためのコネクテッドが求められる。さらに、荷物、人、車両・室内、ドライバーなどを有効活用する、陸海空を跨ぐモビリティのシェアリングが一層進むだろう(乗用車の世界で新型コロナウイルスの影響によってシェアリングエコノミーが一時的にシュリンクしているのとは対照的だ)。
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