日立製作所が開発中のMaaSアプリは、「自発的な行動変容」を促すモビリティサービス

日立製作所と西日本鉄道は2022年1月11日、福岡市とその近郊において、公共交通機関利用者の行動変容を促す実証実験を実施すると発表した。期間は同年2月1日〜3月7日。両社による同テーマの実証実験は2度目となる。

» 2022年01月12日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 日立製作所と西日本鉄道は2022年1月11日、福岡市とその近郊において、公共交通機関利用者の行動変容を促す実証実験を実施すると発表した。期間は同年2月1日〜3月7日。両社による同テーマの実証実験は2度目となる。

 実証実験は「安心快適なおでかけサポート実証実験」と題し、ユーザーが公共交通の混雑を回避するためのピークシフト、移動総量の増加、商業施設への誘客に向けて自発的な行動変容を促す仕掛け「ナッジ応用技術」の効果を検証する(ナッジ=ひじで軽くつつく)。

 コロナ禍で進む公共交通機関の利用減少を食い止めつつ、利用者が混雑を回避しながら安心安全に外出できるようにすることを目指している。利便性が高くサステナブルな公共交通モデルの構築と地域経済の活性化、公共交通機関のピークシフトによる最適化と環境負荷の低減などに今後つなげていく。

 具体的には、実証実験の参加者がスマートフォンのWebアプリで移動経路を検索すると、混雑を回避できるルートやそのための立ち寄り先などを含む移動パターンが、個人の特性に応じて示される。移動パターンは、西鉄の鉄道とバスの各区間における統計的な混雑推定(天候の影響を加味)、商業施設の混雑情報、個人の健康意識や地元への貢献などの志向、目的地への経路などに基づいて提案する。

実証実験で目指す行動変容のイメージ[クリックで拡大] 出所:日立製作所

 検索したルートの一部区間が混雑していた場合、混雑を回避できる代替ルートや、出発時間の変更、寄り道などを提示する。実証実験を通して、提案した内容によって移動パターンの受容率がどのように変化するかも検証していく。

 これらの移動パターンの提案では、関連する“ナッジ”をつなげて行動変容の効果を向上させる「ナッジ連結技術」と、一人一人に合わせてナッジを出し分ける「ナッジのパーソナライズ技術」によって、行動変容を促していく。「何を案内するか、どのように誘導するか」「誰にどんな情報が必要か」「誰に、どんなメッセージで行動を後押しするか」という一連の情報生成をプラットフォームで行う。

 2021年3月から実施した1回目の実証実験では、鉄道は含めずバスのみを対象とした。利用者がWebアプリの促した内容に応じて行動を変容すること、そうした行動変容が交通機関のピークシフトや街の活性化に影響を与えられることを確認した。混雑情報を参考にした利用者が全体の67%を占めた他、15.6%の利用者はバスが「混雑していそうだった」という理由で出発時間や経路を変更したという結果が得られた。また、時差通勤の浸透などを背景に、朝の時間帯は混雑回避の経路が選ばれやすい傾向がみられたという。

 今回の実証実験では、新たに鉄道の混雑、個人の特性、位置情報や時間帯をパラメータとして使用する。ルートや出発時間についてもWebアプリでのレコメンド対象に含まれる。Webアプリでは、バスや鉄道の混雑状況、遅延情報なども見ることができる。対象となるのは鉄道とバスの両方で、西鉄電車の天神大牟田線、太宰府線、甘木線、西鉄バスの天神・博多エリア、大橋駅・西鉄久留米駅を通る路線だ。レコメンド対象となる店舗は前回よりも大幅に増えて3000店以上、参加者は一般から広く募り、前回から倍増の1000人以上を目指す。

アプリ画面のイメージ[クリックで拡大] 出所:日立製作所

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