アサヒグループホールディングスはビールなどの製品製造過程において、カーボンニュートラルを達成するための施策を既に複数取り入れている。その1つが、ビール工場の排水由来のバイオメタンガスを活用した燃料電池の発電システムだ。
同システムはアサヒビールの茨城工場(茨城県守谷市)に導入されている。ビール製造時の排水を処理する過程ではバイオメタンガスが発生するが、これを精製することで燃料電池のエネルギーとして生かす。精製の過程で発電性能を劣化させ得る物質の効率的な除去システムを開発、導入した点が特徴だ。なお、同システムについては排水処理設備を導入している同様の食品工場でも応用できる可能性がある。このため、「食品、飲料業界全体で迅速に社会実装を進めるために、当社グループのみで技術を管理、独占しない方が良いと考えて、特許を取得していない」(原田氏)という。
他社の製品、ソリューションを活用したCO2排出量削減の取り組みも進める。2020年1月からは、同社のアサヒグループ研究開発センターで、東芝エネルギーシステムズの「CO2分離回収試験装置」を用いてボイラーの排ガスに含まれるCO2を減らす実証試験を実施中だ。同装置は、低温時に排出ガスの中からCO2を回収して高温時に放出する性質を持つ吸収液を使っており、排ガスからCO2を分離、回収を効率よく行える。
また、同センターでは2021年9月、水素とCO2からメタンを合成するIHIの「メタネーション装置」も導入している。CO2分離回収試験装置で回収したCO2を活用し、水を電気分解して得られた水素と反応させて合成メタンを作るシステムを構築しており、現在、実証実験中だという。
原田氏は今後の脱炭素化に向けた展望について「カーボンニュートラル達成に向けて高い目標を掲げるだけではなく、具体的な対策にも注力しなければならない。しかし、正直に言うと2050年の目標達成に向けた道筋はまだしっかりと見えていない部分もある。スコープ3の目標達成をはじめ、当社だけでなく他社と共同で取り組む必要のある事柄も多い」と語った。
こうした取り組みの一環としては、東洋製罐と共同で従来品よりCO2排出量を抑制できる国内最軽量の202径アルミ缶蓋を開発した事例などが挙げられる。原田氏は「他社も採用できるよう技術情報の提供体制を整える予定だ。このように当社単独ではなく、国内、グローバル全体で環境負荷を低減していきたい」と語った。
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