電池は途中で「継ぎ足し充電」するのではなく、容量0%まで完全に使い切ってから充電した方がいい? 答えは(×)[クリックで答えを表示]
これはリチウムイオン電池が普及する以前、主にニッケルカドミウム電池などが使われていたころの話であり、現在はあまりお勧めしません。以前の二次電池には「メモリ効果」と呼ばれる特性があり、電池容量を使い切らずにある程度残した状態から再度充放電を行うと、まるで電池が前回の残容量を性能限界だと記憶(メモリ)しているかのごとく、残しておいた容量の付近で性能低下をするようになってしまいます。一般的にリチウムイオン電池にはこの「メモリ効果」が発生しないため、容量0%まで完全に使い切ってから充電する必要はありません。
また、電池容量を0%まで完全に使い切ってしまったからといって直ちに何か問題が発生するわけではありませんが、0%で放置した場合、第1回コラムで解説したように、「自己放電」などによる容量減少によって「過放電」の状態に陥るリスクがある点は注意が必要です。
継ぎ足し充電を頻繁にやりすぎると寿命が縮む? 答えは(△)[クリックで答えを表示]
先述の通り、一般的にリチウムイオン電池には「メモリ効果」がないため、正常な仕様範囲内であれば継ぎ足し充電をしても大きな問題はありません。しかし、そのやり方によっては電池の利用効率や寿命に影響を与える可能性があります。
電池特性を評価した報告事例(※1)では、同じ電池であっても使い方によって寿命に差が出てくることが示されています。容量維持率90%(初期の電池容量から10%劣化した状態)に到達するまでの間に、電池をどれだけ使うことができたのかを比較した結果が次の表です。
(※1)ResearchGate - Modeling of Lithium-Ion Battery Degradation for Cell Life Assessment.:https://www.researchgate.net/publication/303890624_Modeling_of_Lithium-Ion_Battery_Degradation_for_Cell_Life_Assessment
この表では、充電・放電の組み合わせを1サイクルとし、使用した電池容量範囲のパーセンテージごとに比較した結果を示しています。例えば使用容量範囲100%〜25%の場合、スマートフォンなどの電池残量表示で考えると、まず表示が100%になるまで充電した後、表示が25%になるまで使用(電池を放電)することを「1サイクル」とし、その後再び表示が100%になるまで充電し……という状態を繰り返すことを表しています。
単純なサイクル数、すなわち繰り返した充放電回数で見ると、より狭い容量範囲で使用したとき、実運用で考えるとちょこちょこと頻繁に継ぎ足し充電したときほど、容量維持率90%に到達するまでのサイクル数が多くなることを示しています。
しかし、実際に利用できた総エネルギー量で比較してみると話が変わってきます。使用容量範囲75%〜65%の場合、100%〜0%の全容量範囲を「1サイクル」として換算すると900サイクル分のエネルギーが取り出されている一方、使用容量範囲85%〜25%の場合では1200サイクル分、75%〜25%の場合では1500サイクル分と、同じ電池であっても実際に利用できた総エネルギー量に大きな差が出ていることが分かります。
逆の視点から考えると、同じエネルギー量(総量100%)を取り出すにしても、75%〜65%の10%領域を10回繰り返す(=10%×10)よりも、75%〜25%の50%領域を2回繰り返す(=50%×2)方が電池に与える負荷が少なく、寿命が伸びる傾向にあるといえます。こういった電池から取り出せる総エネルギー量の違いはいくつかの要因が複合的に作用することによって生じています。
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