上記3つの目標を、「誰もが、手軽に」達成するためには、技術はもちろん経済面にも配慮が必要です。前回の記事では、IT分野からさまざまなインフラレイヤー向けプロダクトが供給されているものの、ROSロボット/IoTシステム産業の現状に対して高価(数千万円〜)であることを課題として取り上げました。また、多機能で自由度が高いが故に、やりたいことを実現するには高度な専門技術(時にはベンダー固有技術)が要求されるため、ROSロボット/IoTシステムの研究開発に注力したい利用者に余計な負担をかけます。単純に、これらプロダクトと似たモノをオープン実装で供給することは可能かもしれません。しかし、OSS開発側の体制が大規模過ぎて維持が困難になります。何より利用側も「何でもできるインフラレイヤーを必要としているわけではない」とも考えられます。
そこで。ROSロボット/IoTシステムにおけるユースケースや事例を調査しました。その結果、インフラレイヤーには多くの共通点があることが分かりました。それを加味して、RDBOXでは、多くのユースケースに適用可能な「標準インフラレイヤー」を定義することにしました。そして、その標準インフラレイヤーに特化した自動構築/自動運用の各技術を提供しています。このようにスコープを絞ることによって、少数で運営するOSS開発チームであっても、安定したコミットを続けることが可能となりました。
RDBOXでは、標準インフラレイヤーを基礎としてKubernetesクラスタを構築します。そのため、Kubernetesが要求する幾つかの仕様に従う必要があります。例えば、各コンピュータ間で通信可能であることが求められます。それらを考慮し設計された、RDBOXが提供する標準インフラレイヤーのネットワーク図を以下に示します(図2)。
標準インフラレイヤーでは、コンピュータの設置場所を「クラウド」「拠点」の2つに大別することができます。クラウド:拠点は「1:N」の関係性を有します。これらの各設置場所の内部では、同一セグメントのプライベートネットワークが構成されています。そして、設置場所同士は、インターネットVPN(Virtual Private Network、仮想専用線)を用いて、セキュアに結ばれており、プライベートネットワーク内で通信しているかのような状況を実現します。(例:図2の水色雲マーク内の機器は相互通信可能。ただし、拠点同士の接続は制限するなどのセキュリティ制限あり)
RDBOXの標準インフラレイヤーが有する特徴を以下に示します。
情報技術(IT)は往々にして、不確実性(破壊的技術の登場、流行の変化、ベストエフォートなネットワークなど)を含みます。上記で列挙した特徴は、万が一不確実性のわなに嵌ったとしても、そこからの挽回する余地を与えてくれるものです。
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