おやおや、矢面さんが困った顔をして今日も飛び込んできましたよ。
印出さん、こんにちは。いやあ、本当に困りましたよ。
矢面さん、こんにちは。いつも困っていそうだけど、今日はどうしたの?
印出さんまで突き放すようなこと言わないでください。なんか現場でもめちゃってモチベーションがすごく下がっているんです。
あら、どうしたの?
少し大きな仕掛けで実証を進めようと思って、IT部門から最近入ったデジタル技術の専門家を工場に呼んで、1つの製造ラインで高度な取り組みができないかを検討しているところなんですが、それが全くうまくいってなくて……。
現場の専門家とデジタル技術の専門家がかみ合わないということかしら?
まさに、そうなんです。現場の専門家は先進デジタル技術のことが分からない。デジタル技術の専門家はモノづくりの基本や製造技術のことが分からないということで、それぞれの考え方や言葉まで違って、話が通じないんです。
よく聞く話だわ。そこはでもまあ腹をくくって、矢面さんの部門がその調整をするしかないんじゃない?
スマートファクトリー化を進める上で、多くの製造現場が頭を悩ませているのがこの点だと思います。「先進デジタル技術で製造現場のさまざまな課題を解決する」といっても、現場側の専門家の中で、先進デジタル技術への理解が多少でもなければ、解決への発想が生まれません。一方で、デジタル技術の専門家でも製造現場に対する多少なりとも理解がなければ、活用の方向性やポイントを外すことになり、現場に受け入れられないものとなります。
将来的なあるべき姿としてはこれらの両方をカバーできる人材を育てて雇うということが必要になると考えます。実際にこうした人材を生み出すために、大学に講座を立てたり、教育プログラムを作ったりするような動きは増えてきています。また、ファクトリーサイエンティスト協会のように、専門組織として人材育成に取り組むような動きも出てきています。
ただ、こうした人材育成の成果をすぐに受けられるとは限りません。多くの製造現場で今抱えている人材で進めるために必要なのは、“三位一体”で進めることだと考えます。
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