2つ目の技術要素が、AI(人工知能)技術の採用である。オムロンがこれまで積み上げてきたはんだ形状検査に関する知見に加え、MDMC照明により獲得した画像を活用し、はんだ検査に特化したAIを開発。このAI検査と、MDMCによる定量検査を組み合わせることで、ティーチングスキルの低減と“見過ぎ”削減を両立させることに成功した。
“見過ぎ”は検査条件を厳しく設定し過ぎて、良品を検査装置では不良品と判断してしまうことを指す。多くの検査現場では、検査装置で不良品としたワークを目視検査で再度確認し、良品はラインに戻す作業を行っている。不良品を通さないためにはある程度、検査条件を厳しくせざるを得ないが、「見過ぎ」で発生する目視作業は製造現場にとっては大きな負担となっており、この「見過ぎ」を限りなくゼロに近づけたいというのが製造現場の求めるところだ。
「VT-S10シリーズ」では、はんだの良否に特化したAI画像診断機能をあらかじめ組み込んでいることで、この「見過ぎ」を限りなく低減できる他、事前のティーチングの負荷を低減できることが特徴だ。実際に先行顧客との実証実験では「目視工数を85%削減することが確認できた」(オムロン)という。
3つ目の技術要素が、M2Mによる他社製造設備とのデータ連携である。実装装置を展開するパナソニックとFUJIや、はんだ印刷検査機を展開するCKDと連携し、実装工程の情報と検査情報を組み合わせて分析することで、品質傾向を把握し未然に不良発生を防止することを実現する。具体的には「各工程の検査結果を数値・画像含めデータ化することで品質の見える化」や「最終工程の検査結果から印刷後、マウンター後工程の検査基準を自動最適化することで直行率向上」「他製造設備メーカーとデータ連携することで不良低減および未然防止」などを実現する。これらの効果についても「先行顧客との実証では、実不良の43.1%減少、見過ぎ率の5.4%減少を実現した」(オムロン)。
今後はデータ連携が可能な実装装置メーカーとの連携強化も拡大していく方針だ。「既にオランダのASMとの連携に向けた話し合いは進めている。2021年3月期中には連携を実現したい」(オムロン)としている。
これらの新たな機能を盛り込む一方で、検査速度も従来機種比で130%向上したという。価格については「正確には開示できないが、従来機種に対して120%相当となる。価格レンジは1500万〜2000万円くらいとなる」。今後は「VT-S10シリーズ」をプラットフォーム化して、各種部材を入れ替えながら進化させていく方針。「新製品を強みとし外観検査装置の売上高140%成長を目指す」(オムロン)としている。
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