IARシステムズの新社長は40歳、国内組み込み業界に新たな風を吹き込む組み込み開発 インタビュー(1/2 ページ)

組み込み開発ツールのベンダーとして存在感を増しているIAR Systemsの日本法人の新社長に原部和久氏が就任した。国内組み込み関連企業のトップとしては40歳と若い原部氏に、今後の事業戦略や日本の組み込み業界への期待などについて聞いた。

» 2021年06月25日 10時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 組み込み機器のソフトウェアを開発するにはコンパイラやデバッガなどの開発ツールが必要だ。その開発ツールとしては、マイコンやプロセッサを提供する半導体メーカーが提供するものもあれば、オープンソースで提供されているコンパイラや統合開発環境などもある。

 この組み込み開発ツールのベンダーとして、近年存在感を増しているのがスウェーデンのIAR Systemsである。自社開発のC/C++コンパイラを中核に、さまざまなベンダーのマイコンに対応する統合開発環境「IAR Embedded Workbench」が国内ユーザーからも高い評価を得ているのだ。

「IAR Embedded Workbench」を核に事業を展開するIAR Systems 「IAR Embedded Workbench」を核に事業を展開するIAR Systems(クリックで拡大) 出典:IARシステムズ

 2021年4月、IAR Systemsの日本法人であるIARシステムズの新社長に原部和久氏が就任した。国内の組み込み業界が、IT業界と比べて技術者の高齢化が目立っている中で、40歳という若さで社長に就任した原部氏の存在は際立っている。同氏に、IARシステムズの今後の事業戦略や、日本の組み込み業界への期待などについて聞いた。

IT業界から組み込み業界に移ったときに感じた大きなギャップ

MONOist 原部氏はこの3月に40歳になったばかりだそうですが、日本の組み込み業界の企業トップとしてはかなり若いと思います。これまでのキャリアについて聞かせてください。

IARシステムズの新社長に就任した原部和久氏 IARシステムズの新社長に就任した原部和久氏(クリックで拡大) 出典:IARシステムズ

原部和久氏(以下、原部氏) 早稲田大学を卒業後の2003年から、IT業界の営業職を中心にキャリアを重ねてきた。IARシステムズに入社したのは2010年で、それまでのキャリアを生かしてアカウントセールスを担当することになった。入社当時は、同じソフトウェアライセンスを販売するのだからIT業界も組み込み業界も同じだろうと考えていたが、そこに大きなギャップがあったことをよく覚えている。担当分野は、FA、医療、民生機器で、顧客と関係性を深める中で、年間で250〜300のライセンスを納入する実績を上げることができた。

 また、顧客が抱えている課題解決につなげていくには、IARシステムズとしてパートナーシップの強化が必須になると考え、2012年ごろから半導体メーカーとの連携を拡大するための取り組みを本格化させた。特に、マイコン分野で存在感が高まりつつあったArmのエコシステムを広げていく上で、それまでの技術連携だけでなく、マーケティング面での連携も行うようになり、パートナーとのソリューションパッケージも提供できるようになった。このときのキーパートナーの1社がルネサス エレクトロニクスであり、国内でのIARシステムズの認知度向上につなげられたと考えている。

 2018年からは日本国内の営業責任者に就き、その時点でかなり浸透できていたArmマイコン市場だけでなく、Armのプロセッサ系市場での採用を拡大するために、当社の強みであるコンパイラだけでなく、リアルタイムOSやミドルウェアを含めての提案活動を強化するようになった。

 日本のIARシステムズとしてこれまで続けてきた新しいチャレンジに貢献してきたこともあって、今回の社長拝命につながっていると感じている。私に期待されているのは、トラディショナルになりがちな組み込み業界に新しい技術や手法を積極的に取り入れられるようにしていくことではないかと思う。

MONOist IARシステムズのこれまでの事業展開について教えてください。

原部氏 1983年にスウェーデンで創業したIAR Systemsは間もなく40周年を迎える。世界のユーザー数は15万人、サポートするデバイス数は1万4000、ベンダーは70社を超えるなど、多くの組み込み開発に携わる企業や技術者に貢献してきた。

IAR Systemsのグローバルでの事業概要 IAR Systemsのグローバルでの事業概要(クリックで拡大) 出典:IARシステムズ

 グローバルの従業員数は215人(2021年4月時点)で、本社以外に14のオフィスを展開している。それらオフィスの中で最大規模になるのが日本法人のIARシステムズだ。IAR Systems全体の売上高は約48億円だが、このうち16%を日本法人の売り上げが占めており、2020年まで18期連続で増収を続けている。今後も、国内市場の成長余地は大きいと考えており、グローバルとともに成長を続けていきたい。

日本法人のIARシステムズは18期連続で増収を続けている 日本法人のIARシステムズは18期連続で増収を続けている(クリックで拡大) 出典:IARシステムズ
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.