コニカミノルタでは、モノづくり革新への取り組みの中で、先進のデジタル技術を活用した独自の生産DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進している。コニカミノルタが取り組みモノづくり変革への取り組みの歴史と、今後目指すデジタル技術を活用した新たなモノづくりについて、2021年3月までコニカミノルタ 執行役 生産・調達本部長を務め、現在は顧問の立場にある竹本充生氏に話を聞いた。
コニカミノルタでは、モノづくり革新への取り組みの中で、先進のデジタル技術を活用した独自の生産DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進。マレーシアや中国など海外工場での多くの実績を残すとともに、国内におけるスマートファクトリーのモデル工場となる三河新工場をオープンした。
コニカミノルタが取り組みモノづくり変革への取り組みの歴史と、今後目指すデジタル技術を活用した新たなモノづくりについて、2021年3月までコニカミノルタ 執行役 生産・調達本部長を務め、現在は顧問の立場にある竹本充生氏に話を聞いた。
ITmedia産業5メディア総力特集「IoTがもたらす製造業の革新」のメイン企画として本連載「製造業×IoT キーマンインタビュー」を実施しています。キーマンたちがどのようにIoTを捉え、どのような取り組みを進めているかを示すことで、共通項や違いを示し、製造業への指針をあぶり出します。
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MONOist コニカミノルタでは以前からデジタル技術を活用したモノづくりを進めてきましたが、もともとどういう考えで生産DXへの取り組みを進めたのでしょうか。
竹本氏 さまざまな環境変化がある中で生産設備投資についても全体を統括した考え方を持つ必要があった。その中で、生産設備投資は大きく分けると2つの方向性があると行き着いた。1つが事業側のニーズに応えるもので、事業側がビジネス展開するために、事業ごとに必要なQCD(品質、コスト、納期)のために必要な生産設備をそろえ、そのために投資を行うという考え方だ。われわれはこれを「事業ニーズ対応投資」と呼んでいる。
もう1つが、生産側の技術の進歩やニーズに合わせ、生産部門側がより高度な生産の在り方を追求した生産方式を組み立てて設備投資を行うものだ。個別事業でしか使えない生産設備投資を行うのではなく、生産活動を共有の資産やプラットフォームとしていく考え方である。モノづくりの手法を確立しこれを個々の事業に割り振るというような動きだ。これを「生産ニーズ対応投資」と呼んでいる。
従来は「事業ニーズ対応投資」が主で「生産ニーズ対応投資」は従の関係性だった。多くの企業が、この事業側ニーズで設備投資を行ってきていた。また、製造業としても個々の事業に特化した作り方が、製品の差別化につながるという考え方があった。
しかし、周囲の環境が変われば事業も柔軟に変化していく必要がある。「事業ニーズ対応投資」では、その度に新たな生産設備や生産手法が必要になり、変化に柔軟に対応できなくなる。一方で、生産技術やデジタル技術の進化で「生産ニーズ対応投資」の形でも、各事業が求める生産能力を提供することが可能になりつつあった。
こうした背景から、製造業全体が「生産ニーズ対応投資」へとシフトする動きが進むと予測した。そこで、コニカミノルタでも生産・調達本部で「事業ニーズ対応投資」から「生産ニーズ対応投資」へのシフトを進めることを考え、生産能力の共通基盤化への取り組みを進めている。デジタル技術の適用もこれに必要な動きの一環である。現在、ドイツのインダストリー4.0など、世界中で進んでいるデジタルマニュファクチャリングの動きは、この「事業ニーズ対応投資」の形から「生産ニーズ対応投資」への移行競争だと考えている。
より早くこの新しい形に適応し優位なポジションを取ることが、製造業として新たな競争力を手に入れることになる。コニカミノルタでは、材料系やデバイス系、組み立て系などさまざまなモノづくりを自社内に抱えている。生産手法が大きく異なるこれらのモノづくりを取りまとめ、現場密着でモノづくり手法として優位なポジションを確保し、将来の事業に貢献するということを目指し、スマート工場化を進めている。既存工場のスマート化に加え、愛知県豊川市の三河サイトにスマート工場のモデル拠点とする三河新工場を立ち上げた。
MONOist 日本の製造業には「革新的な製品は事業個別でモノづくりを作り上げる『事業ニーズ対応投資』型で生まれる」という考え方も根強くあるように感じていますが、こういう考え方に対してはどう考えますか。
竹本氏 一部で「事業ニーズ対応投資」型は残る可能性はあるが、基本的には「生産ニーズ対応投資」型で対応できる範囲が大幅に広がるというのが今の変化だ。IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの新たな技術の進化で、生産技術を共通基盤化しても多くの個別ニーズにフレキシブルに対応できるようになってきている。こうした技術的な進展も見据えた上でより早く対応していく必要がある。
モノづくりそのもののやり方が特化したものでなくても出来上がった製品としての差別化は可能だ。例えば、現在のモノづくりはモジュール化が進んでいるが、各モジュールでのモノづくりはパターン化することが可能だ。こうしたモノづくりが進めば、個々のモジュールでの自己完結型の品質保証も行いやすくなる。また、バリューエンジニアリングの成果も出やすくなる。
こうした流れに早く対応しないと「生産ニーズ対応投資」型が「事業ニーズ対応投資」型を圧倒するような時代が来てしまう。世界中の主要製造業が移行競争を進める中で優位なポジションを取るためには急ぐ必要があると強い危機感を持っている。
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