ここまでの話は2013年7月に行われたEvidence SRLのセミナー資料をベースとした話なので、その後のアップデートをご紹介したい。
このセミナー直前の2013年5月に、「ERIKA Enterprise v2(Release 2.1.0)」がリリースされている。新たにTexas Instrumentsの「MSP430」やArmの「Cortex-M4」、インフィニオンの「Aurix tc27x」のサポート、既存のサポートの強化、lwIP(lightweight IP)の追加などを行ったバージョンである。その後も細かくバージョンアップを進め、2016年6月にはRelease 2.7.0が登場している。この2.7.0が実質的にERIKA Enterprise v2の最終バージョンとなり、ここからEvidence SRLは「ERIKA Enterprise v3」の開発に入る。これは最終的に2017年12月にリリースされ、現行製品はこのERIKA Enterprise v3となっている(図15)。
v2とv3の主な相違点は以下のようになっている。
対応デバイスも刷新され、以下のものが加わった。
ちなみにCortex-Aについては、AARCH64のみのサポートになっているのが特徴的である。またx86-64については、現状はJailhouse Hypervisor上で動くゲストOSという形に限られているといった具合だ。
さて、ERIKA Enterpriseは、何しろ基本がGPLv2だから、誰でも入手して実行することができる。ダウンロードWebサイトから自分の環境に合わせて必要なファイルを落として展開すればよい。そうは言っても、いきなりどこから始めれば分からないというERIKA Enterpriseの初心者には、Arduino Uno向けのアプリケーション開発の手順も用意されている。まずはこれを使ってERIKA Enterpriseに慣れてみるのも面白いと思う。
日本では、前回紹介した「RT-Thread」並みに名前を聞かないERIKA Enterpriseだが、欧州を中心に車載や産業機器などの分野でガッチリとシェアをつかんでいる、なかなか面白いRTOSである。
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