特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

パナソニックの可搬型バッテリーはIoTを活用、充放電器との分離で新提案製造業IoT(1/2 ページ)

パナソニックが新開発の可搬型バッテリー「e-block(イーブロック)」を発表。一般的な定置用蓄電システムと異なり、充放電器からバッテリーを取り外して使えることが最大の特徴で、複数のバッテリーを入れ替えて運用することなどを想定してIoT化しており、専用のスマホアプリとBluetooth通信でバッテリーの充電状態などを管理できる。

» 2021年03月25日 07時30分 公開
[朴尚洙MONOist]

 パナソニック ライフソリューションズ(LS)社は2021年3月24日、オンラインで会見を開き、新開発の可搬型バッテリー「e-block(イーブロック)」を発表した。一般的な定置用蓄電システムと異なり、充放電器からバッテリーを取り外して使えることが最大の特徴。複数のバッテリーを入れ替えて運用することなどを想定してIoT(モノのインターネット)化しており、専用のスマートフォンアプリとBluetooth通信を用いてバッテリーの充電状態や残容量などを管理できる。価格(税別)は、可搬型バッテリー本体が8万円、AC100Vコンセントを1個備える充放電器「イーブロックデスク」が5万円、AC100Vコンセント2個とUSB給電ポート2個を備えるスタンド型充放電器「イーブロックスタンド」が8万円。同年5月21日に受注を開始し、年間3万台の販売を目標としている。

パナソニックの可搬型バッテリー「イーブロック」 パナソニックの可搬型バッテリー「イーブロック」。左から、デスク型充放電器「イーブロックデスク」と組み合わせた状態、イーブロック本体、スタンド型充放電器「イーブロックスタンド」と組み合わせた状態(クリックで拡大)

 イーブロックは、バッテリーと充放電器をセパレート型にすることで、バッテリーの小型と軽量化を実現した。バッテリーの外形寸法は幅98×奥行き110×高さ220mmで、重量は約2.9kg、電力容量は304Wh。USB type-Aの出力端子を2個備えているので、バッテリーだけでもスマートフォンなどへのUSB充電が可能だ。上部に取っ手があり、容易に持ち運ぶことができる。また、AC100Vコンセントによる電力供給は、専用の充放電器にイーブロックをセットして行う。

「イーブロック」の外観USB type-Aの出力端子上部の取っ手 「イーブロック」の外観(左)。USB type-Aの出力端子は底部に設けられている(中央)。上部の取っ手を使えば容易に持ち運べる(右)(クリックで拡大)
「イーブロック」と「イーブロックデスク」、「イーブロックスタンド」の利用イメージ 「イーブロック」と「イーブロックデスク」、「イーブロックスタンド」の利用イメージ。ノートPCの電力はデスクの左側に設置されているイーブロックデスクから、タブレット端末の電力はイーブロックスタンドのUSB給電ポートから供給している(クリックで拡大)

 従来の定置用蓄電システムは電池残量がなくなれば、コンセントのある場所まで運んで充電する必要があった。イーブロックは、あらかじめ他のバッテリーを充電しておけば、充放電器にセットしているバッテリーを入れ替えるだけで継続して電力を供給できる。

「イーブロック」はバッテリーを交換することで継続して電力を供給できる 「イーブロック」はバッテリーを交換することで継続して電力を供給できる(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 このように、イーブロックでは複数のバッテリーを運用することが想定されており、バッテリーに組み込まれたBluetooth通信機能と専用のスマートフォンアプリを連携することで、登録したバッテリーそれぞれの残量や劣化状態、電化製品ごとの利用可能な時間などを確認できる機能を備えている。通信範囲は10mで、スマートフォンアプリとは12台までのバッテリーを接続可能だ。また、電池残量10%以下や動作エラーなどの警告もスマートフォンアプリに通知するようになっている。イーブロック本体上部にあるLED表示を使えば、スマートフォンアプリを使わずに電池残量やバッテリー状態などを確認することもできる。

「イーブロック」のBluetooth通信機能と専用のスマートフォンアプリを連携することで、複数台のバッテリーの残量や使用状態を一括管理できる(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 発火の危険などがあるリチウムイオン電池製品であることから、イーブロックが高い品質と安全性を有することを示すために、バッテリーと充放電器のそれぞれでPSEマークの認証を取得するとともに、バッテリーと充放電器の組み合わせでも電気製品認証協議会が策定した「Sマーク認証」を取得している。なお、一般的な定置用蓄電システムは、バッテリー本体は電気用品安全法の対象外であるためPSEマークの表示がなく、付属のACアダプターやケーブルだけにPSEマークが表示されている。

PSEマークとSマークの認証を取得 「イーブロック」は個別にPSEマークの認証を取得するだけでなく、システム全体でSマーク認証も取得している(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 イーブロックの電池寿命は、1日1回の充放電を行う場合で5年間を想定している。寿命を迎えた後の廃棄については、十分に放電を行って安全に廃棄できる状態にする「廃棄放電」をスマートフォンアプリから行える。

 災害時での利用を想定している場合には毎日充放電行わないことも考えられるため、長期間の保管が可能なスリープ機能も用意している。なお、スリープ機能を用いる場合は1年に1回の充電を推奨している。

廃棄放電機能スリープ機能 廃棄放電機能(左)とスリープ機能(右)の概要(クリックで拡大) 出典:パナソニック
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