製造業での活用が広がり始めたAI(人工知能)ですが、2021年以降にどのような方向性で進化していくのでしょうか。本稿では注目すべき5つのトレンドを取り上げます。
製造業での活用が広がり始めたAI(人工知能)ですが、2021年以降にどのような方向性で進化していくのでしょうか。本稿では注目すべき5つのトレンドを取り上げます。
AIは、2021年には、エンジニアや科学者が問題解決やアプリケーションの構築を行う際に求める革新的なソリューションとして最初に選択するツールの1つになるでしょう。数学、物理学、制御や信号処理など工学の分野における従来技術は、AIに完全に置き換えられるか、あるいはそれらの機能を拡張するためにAIが用いられます。AIは、これまで解決できなかった問題に答えをもたらすとともに、既存の解決策を強化するのに貢献し続けるでしょう。例えば、CAEなどで活用が始まっている「次数低減モデリング(ROM:Reduced Order Modeling)」は、これまで高コストだった大規模で詳細度の高い3Dモデルのシミュレーションについて、3Dモデルの本質的な挙動を維持したまま次元を減らすことで効率化を実現したソリューションの一例になります。
大学や研究機関などのアカデミアでは、エンジニアリングや科学的なアプリケーションにAIが組み込まれているような研究が増加すると予想されています。この傾向は、AI+制御理論など、既存のカリキュラムにAIを組み込んだ「AI+X」コースが増加していることから、次世代のエンジニアや科学者がAIの使い方を学んでいることが見てとれます。
エンジニアは、AIモデルを用いてデータサイエンティストと協力することで、既存のアプリケーションを強化したり、既存のプロジェクトに適用可能な新たで革新的なソリューションを見いだしたりするでしょう。しかし、AIベースのシステムの作成を成功させるには、単にモデルを開発するだけでは不十分です。そのAIモデルがシステムで利用し続けられるように、トレーニング、デプロイ、モニタリング、アップデートといったライフサイクル管理が必要になります。
これらを効率的に行うためには、AIモデルに関わるプロセスが自動化され、堅牢であるとともに、十分にメンテナンスされている必要があります。2021年においてエンジニアは、開発のベストプラクティス(モデルやデータのバージョン管理など)やITを活用した生産パイプラインなどを含めたワークフローの拡張に取り組むことになるでしょう。これらのプロセスは、実世界環境で何年も何十年も動作させ続けるAI対応システムをサポートするために必要になります。
深層学習ベースのAIは、システムをモデル化する上で、なぜそのように判断したのかを説明できないブラックボックス的なアプローチであると長い間考えられてきました。しかし近年は、研究者によってより多くの説明可能な手法が生み出されており、ソフトウェアベンダーのツールにそれらの手法が含まれるようになることで、産業界の実務的なワークフローの中でAIによるイノベーションをより活用しやすくなるでしょう。
AIモデルがその判断を行った理由や、AIモデルを安全に動作させられる限界について、徐々に理解が進んでいます。エンジニアや科学者は、さまざまなシナリオでAIモデルがどのように動作するかを説明するために実験を行ったり、ビジュアライゼーション技術を活用してAIモデルが本来あるべき動作をしない場合のモデル内部の仕組みを理解したりしています。こうした形でのAIへの理解が、EUROCAE(欧州民間航空電子装置機構)やFDA(米国食品医薬品局)といった自動車や航空宇宙、医療などの国際標準を認証する組織の活動で必要となる、厳しい安全性が要求されるシステムのAIの検証作業におけるイノベーションを推進しています。
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