日系乗用車メーカーの2020年の生産実績、回復の力強さを示す自動車メーカー生産動向(3/3 ページ)

» 2021年02月09日 06時00分 公開
[MONOist]
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ダイハツ

 ダイハツは国内外で明暗が分かれた。2020年のグローバル生産は、前年比18.9%減の139万4595台と5年ぶりに前年実績を下回った。国内は、「ロッキー」とトヨタ向けにOEM(相手先ブランドによる生産)供給する「ライズ」の小型SUV兄弟が販売好調で、登録車の生産が同19.9%増と暦年での過去最高を記録。しかし、台数ボリュームの大きな軽自動車の不調をカバーするまでには至らず、国内生産トータルでは同4.5%減の91万686台と5年ぶりの前年割れとなった。

 比較的好調だった国内に比べて深刻なのが、インドネシアとマレーシアに生産拠点を構える海外事業だ。2020年の海外生産は同36.8%減の48万3909台と3年ぶりに前年実績を下回った。海外生産の減少幅は三菱自に次ぐ大きさで、改めて東南アジア市場の厳しさ示す結果となった。なかでもインドネシアは同49.5%減と落ち込みが目立った。

 欧米に比べて低迷が続いていた東南アジアもようやく回復の兆しを見せ始めている。ダイハツの12月単月の海外生産は同2.5%減の5万354台と10カ月連続で減少したものの、減少幅は11月から18.4ポイント改善。コロナ禍による大幅減が始まった2020年3月以降では初めて1桁パーセント減まで回復した。特にマレーシアは同37.3%増と大幅な回復を見せた。インドネシアは依然として厳しく、同22.4%減と低迷している。

 国内生産はさらに好調で、同7.4%増の8万4110台と2カ月ぶりにプラスへ転じると同時に12月の国内生産で過去最高を記録した。軽自動車が同15.6%増と好調で、主力モデルの「タント」や「ムーヴ」が好調に推移したほか、新型車「タフト」の純増が貢献した。また、11月は樹脂バックドアなどの調達先であるエイエフティーの工場火災により、本社工場と滋賀第2工場で11月16日から約2週間生産を停止した。この影響による受注残解消に向けた挽回生産も12月の増加要因となった。その結果、グローバル生産台数も同3.4%増の13万4464台と10カ月ぶりに前年実績を上回った。

マツダ

 マツダの2020年のグローバル生産台数は、前年比21.0%減の117万5139台と3年連続の減少となった。国内生産は同26.1%減の74万7033台と3年ぶりのマイナス。「CX-30」が新型車効果で大幅に伸びたが、主力モデルの「CX-5」が同23.7%減、「マツダ3」が同39.1%減と大きく落ち込んだ。

 要因としては国内販売が同13.0%減となったほか、輸出も厳しく、ロックダウンが実施された欧州向けは同46.1%減と大きく減少。北米向けも同12.6%減だった。特に欧州はディーゼルエンジン車の販売不振に加えて、二酸化炭素排出量規制への対応でCX-5など上級モデルの価格設定を値上げしたことがマイナスにつながった。

 海外生産も同10.4%減の42万8106台と3年連続のマイナスだったものの、マイナス幅は8社中最小だった。メキシコがCX-30の純増により同24.9%増と伸長した。一方でタイはCOVID-19の拡大による生産停止の影響が大きく同51.5%減。いち早く市場回復が進んだ中国も「マツダ6」やマツダ3が振るわず、同4.6%減にとどまった。

 マツダで気になるのは、生産の回復が伸び悩んでいることだ。COVID-19の感染拡大以降、9月に初めてグローバル生産がプラスに転じたものの、11月には再び前年割れ。12月のグローバル生産も前年同月比3.4%減の11万1157台と2カ月連続のマイナスとなった。国内生産は同8.8%増の7万8490台と2カ月ぶりのプラス。

 一方、海外生産は同23.8%減の3万2667台と2カ月連続のマイナス。中国が2019年に「CX-4」やマツダ6を増産した反動で同35.3%減と大幅減となった。メキシコもマツダ3の減少により同9.6%減、タイも同3.0%減だった。グローバル販売を見ても、北米は好調だが、欧州と日本の販売不振が目立っている。

日産

 8社の中でもとりわけ厳しい実績となったのが日産・三菱自連合だ。日産の2020年のグローバル生産台数は、前年比26.8%減の362万9672台と3年連続で前年実績を下回った。世界的な販売不振による生産調整に加えて、COVID-19拡大による生産停止の影響が重なった。

 国内生産は同37.0%減の50万9224台で3年連続のマイナス。国内向けでは主力モデルの「ノート」「セレナ」「エクストレイル」など登録車の販売が同27.5%減と低迷したことに加えて、輸出も同39.2%減と大幅に減少した。海外生産も同24.8%減の312万448台で、3年連続の前年割れとなった。中国はトヨタやホンダに比べて回復が遅れたこともあり、同7.2%減と前年割れだった。その他の主力拠点に至っては米国が同43.5%減、メキシコが同22.5%減、英国が同29.1%減と大きく台数を落とした。

 ただ、足元では着々と回復が進んでおり、12月単月のグローバル生産は前年同月比9.9%増の39万7438台と15カ月ぶりに前年実績を上回った。けん引役は海外で、同13.1%増の33万9970台と15カ月ぶりにプラスへ転じた。米国は減少したものの、メキシコ、英国、中国が2桁パーセント増となった。中でもメキシコは「セントラ」の増産で同55.1%増と高い伸びを示した。

 国内生産は同6.1%減の5万7468台で23カ月連続のマイナス。減少幅は11月から13.8ポイント改善した。また、2021年1月には国内販売の柱と位置付ける新型ノートを発売し、さらなる回復に弾みをつける狙いだ。一方で、半導体不足が日産にも影響を及ぼしており、発売直後の新型ノートを減産する事態に発展。好調な受注に水を差す格好となっている。

三菱自

 8社の中で最も大きな落ち込みを見せたのが三菱自だ。2020年のグローバル生産台数は、前年比37.6%減の85万4091台と2年連続で前年実績を下回った。前年比で3割超のマイナスとなったのは三菱自のみで、台数でもスバルを下回り8社中最下位となった。

 国内生産は同35.9%減の39万6996台で2年連続のマイナス。国内販売では2020年3月にフルモデルチェンジした「eKスペース」のプラス効果はあったものの、「eKワゴン」が同28.4%減、「デリカD:5」が同44.5%減、「エクリプスクロス」が同52.0%減、「アウトランダーPHEV」が同49.0%減など、主力モデルがそろって低迷。輸出も欧州や北米向けのアウトランダーPHEVやエクリプスクロスの減少で同47.7%減と振るわなかった。

 海外生産も同39.0%減の45万7095台と2年連続のマイナスだった。アジアでのCOVID-19拡大による景気低迷により、主要拠点のタイが同33.6%減と大きく落ち込んだほか、いち早く市場回復が進んだはずの中国に至っては同39.9%減と厳しい実績となった。中国に生産拠点を構える5社の中で、唯一の2桁パーセント減だった。

 三菱自の厳しい状況を示しているのが回復の遅れだ。12月単月のグローバル生産は、前年同月比26.5%減の8万1819台と16カ月連続のマイナス。12月実績では8社中唯一の2桁パーセント減で、減少幅も11月から0.8ポイント悪化した。内訳は国内生産が同36.9%減の3万2847台で9カ月連続の前年割れ。国内販売では、マイナーチェンジしたエクリプスクロスが増加したが、主力モデルのアウトランダーPHEVやeKワゴンが大幅減となった。また、輸出も同46.4%減と低調で、特に欧州向けは8割減となった。海外生産も同17.5%減の4万8972台と15カ月連続のマイナス。他社が好調な中国(同20.8%減)やタイ(同15.5%減)でも依然として低迷している状況だ。

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