DXでアシックスとカシオ計算機が作るスポーツの「コトづくり」とは:製造業がサービス業となる日(2/2 ページ)
2021年3月からサービスを開始する「Runmetrix」は、ランナー個々の走り方などをセンサーで計測し、そのデータを基に「より良い走り」を実現するために指導を行えるパーソナルコーチングサービスである。
センシングのカギを握るモーションセンサー「CMT-S20R-AS」(クリックで拡大)出典:カシオ計算機
まず、カシオ計算機の技術力によって開発したGPSや9軸センサーを搭載したモーションセンサー「CMT-S20R-AS」を腰に装着して走ることによって走行情報を取得する。走行距離やペース、ピッチ、ストライドに加えて、体幹の傾きや骨盤の回転、接地衝撃などフォームに関する指標を数多く算出し、それらの指標をもとに、アプリ上で3Dフォーム分析や改善のためのアドバイスを示す。そして、目的に合わせた練習プランや、解析結果をもとに提示されるストレッチ、筋力トレーニングからなる「からだづくりプログラム」を作成するというものである。
カシオ計算機の腕時計「G-SHOCK GSR-H1000AS」を組み合わせて、フォーム指標をリアルタイムで確認したり、フォームの乱れを検知して通知したりすることも可能だという。価格は、アプリの「Runmetrix」は無料で、モーションセンサー「CMT-S20R-AS」は1万4080円(税込み)だとしている。
両社では今回の「Runmetrix」を第1弾とし、今後はデジタル技術およびデータを活用したスポーツ、健康関連市場に幅広くサービス展開を進める計画である。第2弾サービスとしては既にウオーキングを対象とした「Walkmetrix」を2021年10月に開始する予定としている。その後に対象とするスポーツについては「現時点では未定だが、健康領域ビジネスへの拡大を検討している」(カシオ計算機)としている。
ウオーキング、ウェルネスサービス領域への拡大(クリックで拡大)出典:カシオ計算機
これらのビジネスの拡大と意思決定の迅速化を進めるために2021年中に両社の出資で合弁会社を設立する計画だ。独立企業とすることで、カシオ計算機やアシックス以外の幅広い企業との協業なども進め、エコシステム構築に取り組む。目標として樫尾氏は「コーチングによる課金で5年目には年間100億円の規模にしたい。またサービスの会員数は5万人を目指す」としている。
スポーツ、ウェルネス分野での成長を計画(クリックで拡大)出典:カシオ計算機
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