スマート工場で重要な“触覚”としての情報取得、産業用ネットワークに求められる役割とはCC-Link協会20周年これまでとこれから(3)

工場の自動化を支え続けてきたCC-Link協会(CLPA)は2020年、設立20周年を迎えた。そこで20年の歴史の中でのモノづくりの変化とこれから求められることについて、全4回の連載で紹介していく。第3回となる今回は、CLPA幹事会社のうちBalluff・Cognex・Molex・3MによるCC-Linkファミリー(※)とデバイスレベルの情報連携について紹介する。

» 2020年12月02日 10時00分 公開
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 工場の自動化を支え続けてきた産業用オープンネットワーク団体であるCC-Link協会(CLPA)は2020年に設立20周年を迎えた。20年の歴史の中で世の中の変化をどう捉え、これからのモノづくりをどう導くのか。本シリーズでは4回の連載形式で「CC-Link協会のこれまでとこれから」について紹介し、モノづくりの在り方を読み解く。

(※)CC-Linkファミリー:CC-Link、CC-Link IE、CC-Link IE TSNなど、CLPAが推進する各種プロトコルの総称

 東京大学 名誉教授でCLPA 最高顧問の木村文彦氏による第1回、CLPA幹事会社であるNEC・Cisco Systems・Schneider Electric・IDECの4社による第2回に続き、第3回となる今回は、同じくCLPA幹事会社のうちBalluff・Cognex・Molex・3Mによる取り組みを紹介する。スマート工場化でのデータ収集の重要性が高まる中、これらのデバイスレベルでの情報とITなどのビジネス情報を融合する意義を訴えた。

センサーからクラウドまでの情報統合を推進するバルーフ

 製造現場では、コスト削減などのニーズに対し自動化が進められてきたが、多品種少量生産化が進む中で柔軟性の向上が求められてきた。そこで進むのがスマート工場化である。ただ、そのためにはセンサーのデジタル化とインテリジェント化が前提条件となる。ドイツのBalluff(バルーフ)はIO-Linkデバイスなどセンサー製品群でこれらの変化への対応を訴える。

 同社のデバイスではIO-Link対応により制御信号の他にプロセスに関する状態情報や自身の健康状態など、プロセス改善や予兆保全に関わる情報を出力できる。また、2006年からは産業用ネットワーク製品の分野へ参入し、あらゆる標準規格化されたネットワークに対応する製品を開発。その中でも、CC-Link、CC-Link IE Field、そして2020年8月に発表したCC-Link IE Field Basicと、3種類のCC-Linkファミリーに対応するIO-Linkゲートウェイをリリースしている。ゲートウェイに搭載されたIO-Linkマスターポートで、ユーザー環境においてCC-Linkファミリーのインテリジェント化とデジタル化にセンサーレベルから貢献する考えだ。

photo 各種IO-Linkゲートウェイ。左からCC-Link対応、CC-Link IE Field対応、CC-Link IE Field Basic対応(クリックで拡大)出典:バルーフ

 また、バルーフは2013年にCLPAの幹事会社となり、CC-Linkファミリー内でのIO-Linkデータ実装をサポートした。「今後は、センサーレベルからクラウドまで、通信の統合がFA業界の大きなテーマとなる」(バルーフ)という見通しを示し、CC-Link IE TSNやCC-Link IE Field、CC-Link IE Field Basicなどに加え、特にCC-Link IE TSNの1G通信によるモーションとオートメーションの融合に期待を寄せる。

エッジインテリジェンスを訴求するコグネックス

 同様にスマート工場化におけるセンシングの重要性と「エッジインテリジェンスの価値」を訴えるのがCognex(コグネックス)だ。コグネックスではCLPA幹事会社として、末端のデータと産業用ネットワークを円滑に連携する意義を訴える。

 スマート工場はさまざまな技術要素や機器で構成されるが、その触覚となる情報の入り口がセンサー類である。さまざまなセンサーが工場内では設置されているが、活用が増えているのが「画像」だ。

 例えば、画像情報を解析すれば作業員が行っている目視検査を置き換えることができる。目視検査では作業員が結果を手打ちで入力する必要があるが、ネットワークに直接つながるカメラはこれらの負荷を低減できる。しかし画像情報はデータ量が非常に多く、画素数の少ないカメラでも画像1枚あたり30万バイトに達する。このような大量のデータを工場ネットワークに流し込むのは、ネットワークの帯域を圧迫するため基本的には認められない。

 そこで考えられたのがエッジインテリジェンスである。センサー類が単にデータを垂れ流すのではなく、センサーにできるだけ近いところで「意味のある少量のデータ」へ落とし込む。例えば、製造された製品の良否判定や不良分類、寸法計測、ロボットピッキングでのワークの位置計測、文字やバーコードの読み取りなどがある。良否判定であれば1ビット、位置計測であってもXY座標値や回転情報だけで、数十バイトもあれば十分である。データ量が少ないため転送時間も短くて済み、リアルタイム性が求められる場面では重要となる。コグネックスではこれらのエッジインテリジェンスを持つマシンビジョンを展開している。

 センサーはスマート工場では重要な触覚だが、これらデータを受ける上位のコンピュータや伝送路の機器とうまく組み合わさってこそ「スマート工場」となり得る。「CLPAの役割はそれらをうまくまとめ上げ、美しいハーモニーを奏でるためのコンダクタ(指揮者)の役割を担う。CLPAの責務は重大になってきている」(コグネックス)としている。

photo エッジインテリジェンス機能を搭載したマシンビジョン(クリックで拡大)出典:コグネックス

オープン化でCC-Link IE TSNに期待するモレックス

 Molex(モレックス)は、CLPA幹事会社として「将来のグローバルスタンダード情報の共有」「変化するユーザーユースケースに貢献」「基本機能の充実や関連技術の提供」「CLPA認定品の普及活動とプロモーション」「協会のガバナンス」「顧客満足度の調査」などの活動に貢献する。

 特に力を入れるのが、世界に先駆けて産業用オープンネットワークにTSN(Time-Sensitive Networking)技術を採用したCC-Link IE TSNの普及活動である。安価で容易にかつ誰もが手ごろに実用化できる様に環境整備を進めていく方針だ。

 また、モレックスでは「Industrial Automation Solutions 4.0」のコンセプトを掲げ、IoTや5Gなどがもたらす真のITとOTの融合で、あらゆるオートメーションに貢献できるような取り組みを強化している。真のマルチベンダーを目指し、オープンアーキテクチャやオープンプラットホームへのインタフェース対応など、オープン化に積極的に取り組む姿勢を見せる。

 ユーザー視点での新しいクラウドサービスの提供も行い、ユーザーと双方向コミュニケーションを確立し、エンドユーザー、装置メーカー、サプライチェーン、デバイスメーカーに対する存在価値を高めたい狙いだ。そのためにもCC-Link IE TSNの接続性や将来性は重要になるとモレックスは見ており「CLPAおよびCC-Link IE TSNの活躍の場が一段と広がることを期待する」(モレックス)としている。

photo モレックスが考えるFAデバイスが挑戦すべきテーマ(クリックで拡大)出典:モレックス

CC-Link IE TSN向けケーブルでグローバルでの普及拡大を支える3M

 3M(スリーエム)は、スマート工場を支えるエッジコンピューティングを実現するケーブルなどデータの伝送路の重要性をアピールする。

 スマート工場が広がりを見せる中、工程での稼働状況の把握や工程全体の最適化を図るなど、製造工程におけるリアルタイムでの双方向情報伝送が求められている。また、これまでに工程内で得た情報を分析し、予防および予知保全などを行い安定した生産に役立てる動きも広がってきている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でオートメーション化がさらに広がる動きを見せており、工場内での情報伝達量がさらに増加する中、生産ラインにおける情報ネットワークの高度化、ITと制御の融合は重要なカギを握る。

 これを実現する手段として3Mが重視するのが、産業用イーサネットとして広がりを見せているCC-Link IE TSNである。3Mでは、CC-Link IE TSNのネットワークを支え、高速伝送の信頼性、堅牢性を実現するコンフォーマンステストに合格したケーブルアセンブリー製品の提供を行っている。さらにニーズに合わせた製品開発を進めていく方針だ。高速伝送を可能にするためのノイズ対策としてシールドを強化した二重シールドケーブルでかつ柔軟な這い回しのための細径ケーブルや、コネクター部のラッチ折れ防止プロテクターなど製造現場の環境に耐え得る製品ラインアップを拡充していく方針を示している。

 これらのグローバルネットワークの全世界への供給により、CC-Link IE TSNをアジアのみならず米国や欧州など世界中に普及するための活動をサポートする。CLPA幹事会社として、CC-Link IE TSNによるモノづくりプロセスの高度化に貢献し、さらなる変革に貢献していくとしている。

photo 3MのCC-Link IE TSN対応ケーブル(クリックで拡大)出典:3M

現場の情報取得の高度化に合わせて求められるCC-Link IE TSN

 ここまでCLPA幹事会社4社が考える、スマート工場の在り方や「デバイスレベルからのデータ取得」という視点で見た場合の産業用ネットワークの在り方について紹介してきたが、いかがだっただろうか。

 各社が共通の視点として紹介したのが、製造現場におけるデータ取得の重要性とその情報量の拡大による、伝送や一次処理の高度化ニーズである。これらの新たなニーズに応えていくためには、オープンにさまざまなデータを取り扱える産業用ネットワークの存在だ。その観点でCC-Link IE TSNのもたらす価値は非常に高いといえる。連載最終回となる次回は、CLPA幹事会社の三菱電機の取り組みと、CLPAが考える今後について紹介する。

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提供:一般社団法人CC-Link協会
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