インダストリー4.0の中心地でTSNの価値を叫ぶ、CC-Link IE TSNがもたらすものハノーバーメッセ2019特別企画(CC-Link協会)

スマート工場化や製造現場でのIoT活用が広がりを見せる中、これらを支える産業用ネットワーク技術で、新たな中心規格として注目を浴びているのが「TSN」である。産業用ネットワーク団体としていち早く市場投入を発表したCC-Link協会では、インダストリー4.0の中心地として注目を集めるハノーバーメッセ2019に出展し、同団体の TSN 対応規格「CCLink IE TSN」をアピールした。

» 2019年05月07日 10時00分 公開
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 IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)関連技術など、デジタル技術の発展によりデータを活用した産業革新の動きが進んでいる。製造現場についてもスマート工場化など、製造現場でのデータ活用の動きが加速する状況である。

 一方で、製造現場の機器やシステム、ネットワークなどは、個々が独立した形となっており、一元的なデータ収集が難しい状況がある。また、データを収集できたとしても、タイムスタンプが機器ごとにバラバラである他、データフォーマットもバラバラな状態で、すぐにはデータを活用できないという状況が生まれている。

 これらの解決の1つの助けとなるのではないかと、注目を集めているのが次世代産業用ネットワーク「TSN(Time Sensitive Networking)」である。TSNは、イーサネットをベースにしながら時間の同期性を保証し、リアルタイム通信と非リアルタイム通信の混在を可能にする技術だ。データリンク層のレイヤーに組み込むため、既存のハードウェア設備などがそのまま利用できる。リアルタイム性を確保できる他、時分割が可能であることから、同じケーブルやスイッチなどのハードウェアでも時間ごとに異なるプロトコルの通信を通すことなども可能である。

 これらの特徴がIoT時代の新たなフィールドネットワークとして最適な特徴を持つと関心を高めているのである。このTSNに対応した製品を、産業用ネットワーク団体の中でいち早く市場投入すると発表したのがCC-Link協会(CLPA)である。CC-Link協会では2018年11月に「CC-Link IE TSN」を発表。その後、2019年5月には三菱電機から対応機器の投入なども発表されている。

 CC-Link協会では、このTSNの可能性を訴えるべく、各種展示会などで積極的にアピールを進めているが、ドイツのハノーバーで開催された「ハノーバーメッセ2019」にも出展。ドイツのモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」の進捗確認の場として世界中から注目を集める同展示会であらためて「CC-Link IE TSN」の価値を訴えた。

photo ハノーバーメッセ2019に出展した CC-Link協会のブース。CC-Link IE TSNを全面に打ち出した(クリックで拡大)

「CC-Link IE TSN」が製造現場にもたらす価値

 CC-Link協会がリリースした「CC-Link IE TSN」は、同協会が推進する産業用イーサネット「CC-Link IE」の後継規格となるものだ。従来の「CC-Link IE Control」「CC-Link IE Field」「CC-Link IE Field Motion」「CC-Link IE Safety」などを集約する形での展開を予定する。

 大きなポイントは「TSN」に対応したという点だが、これを生かしてフィールドネットワークとしては4つの特徴を打ち出している。1つ目は「制御通信と情報通信の混在」である。通信に優先度を与えることができるので、リアルタイム性が求められる機器制御のサイクリック通信に優先度を与えて帯域を割り当て、通信環境が制御に影響を与えないようにすることが可能だ。例えば、コントローラーの制御情報とマシンビジョンの映像情報を同じネットワークでやりとりすることなどが可能となる。

 2つ目は「システムの早期立ち上げや高度な予知保全」である。ネットワーク機器の診断容易化を実現するためにSNMP(Simple Network Management Protocol)に対応し、各ネットワーク機器の状況を一括で収集、分析できる。さらにTSN の機能を生かし機器間の時刻のズレも補正可能だ。ネットワーク異常が発生した際に原因究明と早期復旧が可能となる他、正しい時刻のデータが簡単に収集できるという利点がある。

 3つ目が「通信周期の異なる機器を最適に使用可能」という点だ。同一のマスター局でも複数の通信周期が選べるため、サーボアンプのような高速周期のものと、リモートI/Oなどの低速周期のものを混在可能である他、それぞれのパフォーマンスは最適化ができる。

 4つ目は「100Mbpsでも1Gbpsでも、ハードウェア実装とソフトウェア実装の選択が可能」という点だ。2つの性能、2つの実装方法から組み合わせて求める形で活用できる。従来にはなかったソフトウェア実装に対応したことが特徴で、1Gbpsの性能が必要ないという場合にも柔軟に対応できるようになったという。

 仕様発表後の手応えについて CC-Link協会 事務局長の川副真生氏は「日本や欧州をはじめ、中国や韓国、台湾、北米など各地の展示会を通じて、CC-Link IE TSN の価値を訴えてきましたが、良い手応えを得られました。特にTSNが持つオープン性への反応がよかったと感じています」と語る。

「CC-Link IE TSN」の動作デモで価値を訴求

photo 「CC-Link IE TSN」の動作デモ。カメラの画像と制御信号を混在させて「CC-Link IE TSN」で流している(クリックで拡大)

 ハノーバーメッセ2019では、動作モデルのデモンストレーションなどを通じて、これらの特徴を訴えた。ハノーバーメッセはドイツが推進するインダストリー4.0の中心展示会として位置付けられており、スマートファクトリー化のさまざまな課題解決に向けたソリューションや製品の展示、技術の発表などが行われている。TSNも大きな注目トピックとなっており、さまざまな企業がTSN関連のデモンストレーションなどを披露した。

 川副氏は「産業用ネットワークでは、シリアルフィールドバスからイーサネットプロトコルに置き換わる動きが数年前に進みましたが、次はTSNがベースになると考えています。ハノーバーメッセでもそういう傾向は強く出ていると感じました。こうした流れをいち早く取り入れ、さらに製品化までを早く実現できていることは非常にポジティブに受け止められています」と手応えについて述べる。

 デモンストレーションでは、三菱電機の「CC-Link IE TSN」対応のコントローラーやI/O、HMIなどの他、ドイツHIRSCHMANNや台湾MOXAのネットワークスイッチ、米国COGNEXのマシンビジョンなどを組み合わせてシステムを構築。カメラの画像と制御信号を混在させて、「CC-Link IE TSN」で流すデモを行った。川副氏は「実際に動作させているところで関心を持って見てもらえていたと感じています。早く製品を持ってきて欲しいという声も多くいただきました」と語る。

開発ツールの提供で製品投入を加速へ

 CC-Link協会では、さらに「CC-Link IE TSN」のグローバルでの普及を目指し、提案を強化していく方針である。欧州では新たに現地の人員を強化し、欧州の産業機械メーカーなどへの提案を進めていく。

 CC-Link Partner Association(欧州)のゼネラルマネジャーであるジョン・ブローウェット(John Browett)氏は「グローバルで CC-Link IE TSNの普及を進める中で、ドイツは鍵を握る市場です。多くのオートメーションベンダーや機械メーカーなどが存在するからです」と力を込める。

 さらに、ブローウェット氏は「従来の産業用ネットワークは各地域で強い制御機器のメーカーが主導する産業用ネットワーク規格が中心となり、スイッチや配線などネットワークを構成する要素でも、独自仕様のものを使う必要があり、IT用ネットワークや他の産業用ネットワークとの間で回線や機器の共有ができないといった課題がありましたが、それぞれの産業用ネットワーク規格がTSN対応を表明し、相互運用性が高まるため、徐々に環境も変わると見ています。その中でいち早く製品展開を開始する強みを発揮したいと考えています」と「CC-Link IE TSN」の意義について語っている。

 既にCC-Link協会とPROFIBUS & PROFINET International(PI)はネットワーク間の相互接続を実現する取り組みなども進めている。また、上位のITシステムとの連携に強いOPC UAとの連携なども進んでいる。「TSN」化を通じて、さらにそれぞれの規格間の連携などが進む可能性などもあるとしている。

 今後はさらに、製品など実際の製造現場での価値創出を急ぐ方針だ。CC-Link協会の開発ツールパートナーとしては、三菱電機の他、ドイツHilscher、スウェーデンHMSインダストリアルネットワークス、米国ANALOG DEVICES、ルネサスエレクトロニクスなど9社が参加し、開発などを進めているがさらに加速させる方針である。

 2019年5月から一部製品が投入されるが「対応製品をできる限り早く、より多く世に送り出すことが2019年度(2020年3月期)の目標です」と川副氏は語る。そのために「開発ツールの充実に取り組んでいきます」(川副氏)とする。開発ツールを用意することで、製品の投入をさらに広げていく狙いである。

 「CC-Link IE TSN」の普及において、特に期待する業界については、従来より強い自動車分野に加え、半導体やリチウムイオンバッテリーなど装置系産業、マテリアルハンドリング分野、食料品製造分野などを挙げている。「基本的には業界を限定するものではありませんが、今後さらに自動化やオートメーション化、スマートファクトリー化が加速していく領域では活用が進むと見ています」(川副氏)。

 スマートファクトリー化が広がりを見せる中で、エッジ領域のデータの収集や整理の負担は重くなるばかりである。こうした負担を軽減し、既存設備の制御など工場運営に影響を与えずに、有効なデータを活用するには、TSNのような仕組みが効果を発揮する。今後は産業用ネットワーク間の連携もTSNをベースに進むとみられる中、そのTSNにおいていち早く製品化を実現した「CC-Link IE TSN」の活用は、スマートファクトリー化を加速する中で、有効な投資となることだろう。

photo 右からブローウェット氏、川副氏、柴垣氏

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