スマート工場化で広がる「CC-Link IE TSN」の世界、開発パートナーも順調に拡大産業オープンネット展2019特別企画(CC-Link協会)

世界で初めて「TSN」技術に対応した産業用ネットワーク規格として大きな注目を集める「CC-Link IE TSN」。開発パートナーの拡大など、普及拡大に向けて着実に環境整備が進む。「産業オープンネット展2019」ではこれらの進捗状況が披露され、広がる「CC-Link IE TSN」の世界が示された。

» 2019年08月28日 10時00分 公開
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 スマート工場化など工場内のデータ活用が広がりを見せる中、産業用ネットワークにも従来以上に柔軟性やデータ活用に必要な機能などが求められるようになっている。その中で大きな注目を集めるのが、「TSN(Time Sensitive Networking)」に対応した「CC-Link IE TSN」である。2018年11月に発表された「CC-Link IE TSN」だが、対応製品投入が進む他、開発パートナーなども着実に増やし普及への環境整備が進んでいる。

 こうした中で「CC-Link IE TSN」の普及に取り組むCC-Link協会は、「産業オープンネット展2019」(2019年7月23日大阪・グランキューブ大阪、同年7月30日東京・大田区産業プラザPiO)に出展し、広がる「CC-Link IE TSN」の世界を訴えた。

期待の「TSN」にいち早く対応した「CC-Link IE TSN」

 2000年より産業用ネットワーク「CC-Link」の普及・推進活動を推進するCC-Link協会は、2007年に業界で初めて1Gbpsイーサネットをベースとした産業用オープンネットワーク「CC-Link IE」を展開。コントローラー間を結ぶ「CC-Link IE Control」、コントローラーと現場の機器をつなぐ「CC-Link IE Field」、モーション制御の「CC-Link IE Field Motion」、安全制御の「CC-Link IE Safety」とCC-Linkファミリーを拡大させ、工場のネットワークプラットフォームとして、アジア地域を中心に普及を進めてきた。

 ただ、これらのネットワークを展開する中でも市場環境は大きく変化してきた。ドイツのインダストリー4.0など第4次産業革命とも呼ばれる大きな変革の動きが進み、工場の中でもIoTやデータ活用を進める動きが本格化してきたのである。こうした動きを背景に、CC-Link協会が、このCC-Linkファミリーの最新ラインアップとして2018年に仕様策定したのが「CC-Link IE TSN」だ。標準イーサネット規格を拡張した「TSN」を、世界に先駆けて採用したことが特徴となる。

 「TSN」はIEEEの国際標準化と並行してさまざまな産業用オープンネットワークへの適用検討が進んでおり、時分割通信方式により、従来のイーサネット通信ではできなかった制御通信(リアルタイム性の確保)と情報通信(非リアルタイム通信)の混在を可能としている。また、「CC-Link IE TSN」は、ネットワーク機器の診断容易化を実現するためにSNMP(Simple Network Management Protocol)に対応し、汎用のイーサネット診断ツールで各ネットワーク機器の状況を一括で収集、分析できる。これにより、システム立ち上げ時やシステム運用・メンテナンス時の、機器動作状態の確認などの工数削減が可能だ。

 さらに「TSN」の機能を生かし機器間の時刻のズレを補正でき、正確にタイムスタンプされたログデータを活用できるため、装置やラインで異常が発生した際に原因究明と早期復旧を行うことができる。加えて、ITシステムへ生産現場のあらゆる情報と正確な時刻情報をひも付けてITシステムへ提供することができ、AIを活用したデータ解析アプリケーションによる予知保全などで、より一層の精度向上が期待できる。他にも、31.25μs(マイクロ秒)よりも高速なモーション制御に対応可能とする他、通信周期の最適化により、高周期通信と低周期通信を組み合わせた最適システムを実現するなど、さまざまな特徴を持つ。

 「CC-Link IE TSN」はこれらの技術で、よりオープンな産業用ネットワーク環境を実現する。また、ハードウェアだけでなくソフトウェアでの実装を可能とし、さまざまなタイプの機器への実装を支援する。これにより、IoTを活用したスマート工場の構築実現を加速させる。

 2018年11月の「CC-Link IE TSN」発表以降、ドイツのハノーバーメッセへの出展など、グローバルでもさまざまな普及促進活動に取り組んできたCC-Link協会 事務局長の川副真生氏は「全世界でさまざまな告知やプロモーション活動を進めてきましたが、徐々に環境が整いつつある手応えを感じています。対応製品が既に市場へリリースされた他、開発パートナー各社からの開発手法も拡大しています」と手応えについて語っている。

映像信号と制御信号を1本のケーブルで流す

 CC-Link協会は、今回の産業オープンネット展2019ではこれらの「CC-Link IE TSN」の特長やパートナーの対応製品を紹介した。デモ展示では、カメラで撮影した画像をPCに送りながらリアルタイム制御の定時性を確保するなど、制御信号と映像信号を1本のケーブルで同時に流せるという点をアピールした。

photo 産業オープンネット展2019におけるCC-Link協会の「CC-Link IE TSN」のデモ展示。赤丸部分(橙色ケーブル)において映像信号と制御信号が同一配線で流れている(クリックで拡大)

 また、「CC-Link IE TSN」対応に賛同したパートナー企業の製品や技術なども紹介。「CC-Link IE TSN」対応予定の産業用スイッチとして、ドイツのHIRSCHMANNと台湾のMOXAの製品を参考出展した他、対応を検討する開発パートナーの製品やツールなどを紹介した。「CC-Link IE TSN」開発支援ツールを開発検討中のツールパートナーとしては、三菱電機の他、ルネサスエレクトロニクス、図研エルミック、スウェーデンのHMSインダストリアルネットワークス、ドイツのHilscher、米国のANALOG DEVICES、など10社があるという。

photo 「CC-Link IE TSN」対応製品を開発予定のツールベンダーやデバイスベンダーの既存製品やソリューション群(クリックで拡大)

 川副氏は「対応製品やツールの開発を決定いただいたパートナー様も着実に増えています。対応製品のラインアップが拡大することで、「CC-Link IE TSN」の普及にも弾みがつくと考えます」とパートナー企業の積極的な姿勢に期待をかける。またこれらのツールベンダーやデバイスベンダーだけでなく、エンドユーザーからの反応も高まってきているという。「エンドユーザーから直接『予知保全機能を実現するために、データの収集や解析をしたかったが従来は難しかった。CC-Link IE TSNで時刻同期機能などにより実現できそうだ』という声などをいただくことも増えました。着実に普及の環境は整いつつあるといえます」と川副氏は定着の広がりを訴えている。

産業オープンネット展会場では各社が「CC-Link IE TSN」を紹介

 さらに、産業オープンネット展では、CC-Link協会のブースだけではなく、各社のブースで「CC-Link IE TSN」が紹介されたことなどもポイントだ。

 三菱電機では、世界で初となる「CC-Link IE TSN」対応のFA製品群102機種を2019年5月から市場投入しているが、産業オープンネット展ではこれらの機器を生かした「CC-Link IE TSN」デモ展示を実施。映像信号と制御信号を時分割方式で伝送し、HMIにより映像信号の通信容量が上下する中でも制御信号については影響を受けない様子をHMIで表示して紹介した。また、「CC-Link IE TSN」の機能などを活用し、断線の状況などをリアルタイムで把握できるデモなども行った。

photophoto (左写真)画面上部の映像信号(青丸部分)をオンオフしても画面下部の制御信号(赤丸部分)には影響しない、(右写真)赤丸部分が断線しても青丸部分のようにリアルタイムで把握できる(クリックで拡大)

 図研エルミックでは2019年7月に発表したソフトウェアデベロップメントキット(SDK)「Ze-PRO CC-Link IE TSN(Remote)」を紹介した。同製品は三菱電機から技術供与を受け、「CC-Link IE TSN」対応機器をより簡単、確実に開発することを目指し製品化したものだ。三菱電機エンジニアリングと連携し、製品開発からコンフォーマンス試験、試作・量産に至るまで、ソフトウェア、ハードウェアの両面から総合的に機器ベンダーをサポートする。

 「CC-Link IE TSN」規格準拠のプロトコルスタック(ソースコード)とサンプルアプリケーションで構成され、トランスポート層、ネットワーク層、アプリケーション層や、RTOSとのインタフェース層を設けることで、ターゲットハードウェアに簡単に実装が可能となる。「特に簡易的に実装ができるところと、現状のハードウェアを活用できるところがポイント」(同社)という。

 今回紹介したのはリモート(スレーブ)側の開発キットだが、2019年度中には「CC-Link IE TSN(マスタ)」対応SDKのリリースも予定。「CC-Link IE TSN」対応機器開発に取り組む顧客に向け「より使いやすく」「より短期間に」を目的とし、LSIメーカー各社のCPUレファレンスやOSレファレンスの開発にも取り組むという。

photo 図研エルミックが出展した「CC-Link IE TSN」対応のSDK(クリックで拡大)

 HMSインダストリアルネットワークス社は、自社製品のAnybusがCC-Link、CC-Link IE Fieldの接続ソリューションとして多くの実績を残している。「CC-Link IE TSN」についても、Anybus製品への迅速な展開でCC-Linkファミリーとの強固な協力体制を継続する考えだ。産業オープンネット展ではモジュールを用意。早期の開発を推進する方針だとしている。

photo HMSインダストリアルネットワークスの「CC-Link IE TSN」対応モジュール。「CC-Link IE TSN」対応機器の開発の早期化に貢献する(クリックで拡大)

 この他、ルネサスエレクトロニクスでは、従来展開していたCC-Link IE Field対応産業イーサネット通信用LSI「R-IN32M4-CL2」に加え、「CC-Link IE TSN」対応版を検討していることを表明。パートナーであるテセラ・テクノロジーやIARシステムズなどと共同で、評価キットなどを用意し、開発を加速させていく方針を示している。

photo 今後「CC-Link IE TSN」対応を進める予定の評価キット(テセラ・テクノロジー)(クリックで拡大)

「TSN」環境が定着へ

 「TSN」は産業用ネットワーク技術としてデファクトスタンダード化すると見られているが、「CC-Link IE TSN」はいち早くこの「TSN」技術を採用した産業用ネットワークとして、数多くの開発パートナーやデバイスパートナーから期待を集めている。産業オープンネット展で見られたように、「CC-Link IE TSN」を活用する環境は、着実に定着する様子を見せているといえる。

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提供:一般社団法人CC-Link協会
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2019年9月27日