ということで、意外なところでちゃんとユーザーがいることが判明したのがこのZephyrである。もともとRocket自身が、32ビットMCUをターゲットに、4KB程度のフットプリントで動作する軽量RTOSを目指したということもあって、こうした特徴はZephyrにも引き継がれている。
主な特徴は以下のようになっている。軽量という割には欲張った機能が提供されていることが分かるだろう。
また、サポートするプロセッサアーキテクチャは以下のようになっている。
Zephyrのプロジェクトが始まったのが2017年と比較的新しいこともあり、昨今のMCUのトレンドに沿ったアーキテクチャがサポートされている(逆に、古いアーキテクチャは未サポート)。オプションの形でBluetooth Low Energy(BLE)/Wi-Fi/IEEE 802.15.4 Radioがサポートされ、プロトコルとしても6LoWPAN/COAP/IPv4/IPv6/Ethernet/USB/CAN/Threadなどが対応リストに上がっている。
LTS(Long Time Support)の提供とセキュリティの対応に力点が置かれており、特にセキュリティに関しては安全規格の認証が取得できるレベルの監査をコードベースで行うことを念頭に置いている。
ただこうした体制なので、Zephyr Projectのメンバーは開発者個人というよりは企業メンバーということになる。実際に、Member Directoryを見ると、そうそうたる企業が名を連ねている。特に、セキュリティや安全規格、監査について原則参加できるのはPlatinum Member(年間10万〜12万米ドルを支払う必要がある)に限られており、これだけの金額を支払うからには真剣に活動を行って成果を上げる必要がある。
その意味でZephyrは、Apatch 2.0 Licenseで提供され、商用/非商用問わず無償で利用できるにしては、かなり商用OSに近いグレードのRTOSが提供されているということになる。知名度の低さから、あまりこれを利用しているという話を聞いたことはないのだが、なるほどIntelが自社製品にZephyrを採用したのは、単に他のOSを扱える人間がいないなどという理由ではなく(いや、それはそれであるのかもしれないが)、それなりに製品のクオリティーを保つためには必須のRTOSであると判断したのかもしれない。
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