流体解析をテーマに、入門者や初学者でも分かりやすくをモットーに、その基礎を詳しく解説する連載。今回は、流体と固体の相互作用をテーマに、流体、構造の「連成解析」について取り上げる。
前回は、「水」と「空気」という2つの異なる流体を扱いました。今回は“2つの異なる”までは同じですが、「流体」と「固体」の相互作用について考えてみたいと思います。
固体については、変形や応力などを求める「構造解析」と、解析対象となる部品を剛体として扱う「機構解析」がありますが、ここでは構造解析を対象とします。
一般的に構造解析を行うソルバーと、熱流体解析を行うソルバーは異なります。また、解析を行うエンジニアも「構造解析は詳しいけれど、流体解析についてはそれほど詳しくない(あるいはその逆)」といったことも珍しくありません。そのため、本来ならば(例えば)水の流れによる圧力や風圧などを考慮した構造解析を実施しなければならないとしても、ある想定に基づいて荷重条件を設定して構造解析のみを行うといったこともよく見られます。
その一方で、より厳密な結果を求める必要がある場合に、「連成解析」を行いたいというニーズもあります。例えば、前回の記事で用いた橋脚の周囲を流れる水流が与える圧力を考えた際、単純に“橋脚に圧力を与える”ということでも解析は可能ですが、変動し、渦を巻く水流の物理現象をより厳密に考慮したければ、“流体解析と構造解析を連成させて解析を行う必要がある”でしょう。
そこで、「流体構造連成解析」の出番です。流体構造の連成解析は、「FSI(Fluid-Structure Interaction)」と呼ばれることもあります。
先ほど、「より厳密な結果を求める必要がある場合に、連成解析を行いたいというニーズもある」と説明しましたが、実際の現象をより厳密にシミュレートしようとすると、“多くの現象が複数の領域にまたがっていること”に気が付くと思います。
例えば、機構部品の応力解析を行いたい場合、通常は着目する部品に対して、適切と思われる境界条件を与えて解析を実行します。場合によっては、これが単品ではなくてアセンブリで行うこともありますが、適切と思われる境界条件を人間が想定して与えることに変わりありません。
そうではなく、実際に機構の動きの中でシミュレーションしたければ、機構解析で求められた力などの情報を、構造解析の境界条件として与える――。すなわち、可能ならばこの2つを連成させて解析した方が、より精度の高い結果が得られるでしょう。
同様に、自動車や航空機、あるいはポンプなどの流体と、その流れの相互作用を追い求めていくと、やはり連成解析を行う必要が出てきます。流体解析で求められた解析結果をざっくりとした形で人間がマニュアルで構造解析ソフトの境界条件として入力しても、もちろん“傾向を求める”という意味では十分かもしれませんが、精度の高い結果とはいえません。
やはり、より精度の高いシミュレーションとなると、異なる2つの領域の情報を共有しながら解析を行う、連成解析が必要となってきます。
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