日系乗用車メーカー8社の2020年上期(1〜6月)のグローバル生産実績は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響を受けて、全社が2桁減となる厳しい結果となった。依然としてCOVID-19の感染は広がっているものの、北米などでは新車需要が回復しており、これを受けてメーカー各社は生産ペースを戻しつつある。
日系乗用車メーカー8社の2020年上期(1〜6月)のグローバル生産実績は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響を受けて、全社が前年同期比で2桁%以上の減少という厳しい結果となった。北米や欧州などがロックダウンで海外生産が大幅減となった他、国内生産でも、輸出需要の急減や消費増税の反動、活動自粛による国内新車販売の低迷が響いた。COVID-19の震源地である中国は、足元では回復傾向を示しているものの、年明けから続いた生産停止による落ち込みをカバーするまでには至らなかった。
依然としてCOVID-19の感染は広がっているものの、北米などでは新車需要が回復しており、これを受けてメーカー各社は生産ペースを戻しつつある。第2波の懸念はあるものの、上期に失った新車需要の反動という意味でも、下期の生産は右肩上がりの回復も期待できそうだ。
上期の世界生産を分析すると、海外生産の落ち込みが目立った。これは日系自動車メーカーが得意とする北米とアジアで大きく台数を落としたことが要因とみられる。海外よりも国内生産の落ち込み幅が大きかったマツダは、世界生産に占める国内生産の割合が大きく輸出に依存していることが台数に表れた。日産自動車は比較的緩やかな落ち込みで済んだ中国が下支えした格好となった。
一方、6月単月の生産実績はメーカーによって明暗が分かれた。これは生産拠点を構える地域による差が大きく表れたといえる。足元の新車市場の動向をみると、中国や北米などは回復基調にあるものの、日本やインド、東南アジアなどは依然として厳しい状況が続いているためだ。このため北米や中国で台数を稼いでいるトヨタ自動車やホンダ、日産などが回復傾向を示した。
国内 | 海外 | (うち北米) | (うち中国) | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|
トヨタ | 1,299,181 | 2,014,305 | 609,806 | 638,304 | 3,313,486 |
▲ 27.0 | ▲ 29.6 | ▲ 36.0 | ▲ 3.1 | ▲ 28.6 | |
ホンダ | 369,251 | 1,404,956 | 576,340 | 604,599 | 1,774,207 |
▲ 21.9 | ▲ 36.7 | ▲ 40.8 | ▲ 18.6 | ▲ 34.1 | |
日産 | 232,329 | 1,227,885 | 365,317 | 576,254 | 1,460,214 |
▲ 42.5 | ▲ 40.4 | ▲ 51.4 | ▲ 20.2 | ▲ 40.8 | |
スズキ | 394,984 | 602,627 | - | - | 997,611 |
▲ 17.3 | ▲ 46.8 | - | - | ▲ 38.0 | |
ダイハツ | 415,741 | 206,496 | - | - | 622,237 |
▲ 12.2 | ▲ 43.6 | - | - | ▲ 25.9 | |
マツダ | 292,029 | 196,162 | 62,593 | 103,013 | 488,191 |
▲ 44.4 | ▲ 11.9 | 15.4 | 6.3 | ▲ 34.7 | |
三菱 | 211,991 | 228,381 | - | 29,871 | 440,372 |
▲ 31.7 | ▲ 37.7 | - | ▲ 50.0 | ▲ 34.9 | |
スバル | 226,704 | 136,128 | 136,128 | - | 362,832 |
▲ 20.7 | ▲ 32.9 | ▲ 32.9 | - | ▲ 25.8 | |
合計 | 3,442,210 | 6,016,940 | 1,750,184 | 1,952,041 | 9,459,150 |
国内 | 海外 | (うち北米) | (うち中国) | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|
トヨタ | 159,907 | 428,909 | 152,568 | 144,611 | 588,816 |
▲ 44.8 | ▲ 11.6 | ▲ 8.4 | 21.6 | ▲ 24.0 | |
ホンダ | 64,662 | 324,789 | 132,706 | 169,547 | 389,451 |
▲ 17.5 | ▲ 10.4 | ▲ 15.5 | 24.1 | ▲ 11.7 | |
日産 | 24,964 | 233,001 | 61,128 | 151,573 | 257,965 |
▲ 60.8 | ▲ 25.3 | ▲ 42.7 | 32.4 | ▲ 31.3 | |
スズキ | 83,173 | 65,259 | - | - | 148,432 |
15.3 | ▲ 55.7 | - | - | ▲ 32.4 | |
ダイハツ | 69,434 | 29,465 | - | - | 98,899 |
▲ 5.5 | ▲ 31.0 | - | - | ▲ 14.9 | |
マツダ | 34,181 | 37,334 | 11,761 | 21,925 | 71,515 |
▲ 59.4 | 6.4 | 110.2 | 33.5 | ▲ 40.1 | |
三菱 | 24,675 | 24,688 | - | 9,208 | 49,363 |
▲ 54.6 | ▲ 54.6 | - | ▲ 4.5 | ▲ 54.6 | |
スバル | 29,881 | 31,442 | 31,442 | - | 61,323 |
▲ 46.3 | 18.7 | 18.7 | - | ▲ 25.3 | |
合計 | 490,877 | 1,174,887 | 389,605 | 496,864 | 1,665,764 |
※上段は台数、下段は前年比。単位:台、% |
メーカー別に見ると、トヨタの2020年上期のグローバル生産台数は331万3486台で前年同期比28.6%減と2年ぶりに前年実績を下回った。国内生産は同27.0%減の129万9181台と2年ぶりのマイナス。COVID-19感染拡大による3月以降の生産停止が大きく響いた。海外生産も同29.6%減の201万4305台と2年ぶりの減少となった。地域別では、主力の北米が同36.0%減の60万9806台と4年連続の減少。3月中旬までは「RAV4」などを中心に好調だったものの、感染拡大による生産停止で前年割れとなった。
アジアは同20.7%減の100万4534台と2年ぶりに減少した。生産台数の多いタイが生産停止により同43.5%減と大きく落とした。フィリピンやパキスタンも半減。インドは市場縮小と感染拡大による生産停止が重なり同65.7%減と大きな落ち込みとなった。中国は、年始からCOVID-19の感染拡大で生産停止を余儀なくされたが、4月からの挽回生産により上期トータルでは同3.1%減まで回復した。欧州はロックダウンによる生産停止で同28.6%減となった。中南米はアルゼンチンの通貨下落による市場低迷に加えてCOVID-19による生産停止も重なり、同57.0%減と大きく台数を落とした。
トヨタの6月単月は、グローバル生産が前年同月比24.0%減の58万8816台で、6カ月連続の前年割れだった。国内は同44.8%減の15万9907台と9カ月連続のマイナス。国内全工場で4日間の稼働停止などを実施したことで大幅減となったが、減少幅は5月より12.2ポイント改善した。海外は同11.6%減の42万8909台で、6カ月連続の減少だったものの、5月に比べて41.4ポイントと大幅に改善した。要因としては主力市場の北米が個人向け需要の回復により同8.4%減まで戻した他、市場回復が進む中国は同21.6%増と3カ月連続のプラスとなった。欧州も同3.9%減と回復傾向が続く。一方、アジアはタイやインドネシア、フィリピン、インドなどが依然として落ち込みが激しく、中国を含むアジアトータルでは同9.5%減だった。中南米も同65.6%減と厳しい状況が続いている。
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