ケーススタディーとして実際にこの検証手法を活用した事例を紹介する。ECU数は8個で、通信仕様は異なるものが4種類ある場合の検証を行った。通信信号の種類は2つで、イベント通知信号と制御信号がある。イベント通知信号は各ECUの状態遷移を流す。それに伴って送信される制御信号の送受信可否が重要な判定基準となる。通信仕様は共通して「起動」「過渡1」「過渡2」「停止」の4つの状態を持つ。状態遷移時間とイベントは各通信仕様により異なる。制御信号は起動状態のみで送受信できる。起動状態に向かう遷移は1つの遷移時間であり、停止状態に向かう遷移は遷移時間にバラツキを持つとする。
ここでの協調仕様検証は、仕様間不整合検出(送受信タイミング不整合検出)について、今回、テストパターンとして26万2144の網羅的な組み合わせとして検証した。その結果「従来の1000倍の組み合わせ評価にもかかわらず解析実行時間は5時間、結果処理時間は3日と従来の12分の1の期間で検証することができた。STIMULUSをつかうことで膨大なテストパターンでも短い期間で検証することが可能となった」と山口氏は評価した。不整合の発見は240個で、発生条件を分析しこれらを解決する検討を行った。そして解決したもので、協調仕様を作り出すことができたという。これにより、使用品質の向上と期間短縮を実現し、また、多変量解析との連携により、早期に仕様値を最適化することが可能となった。
今後の展望としては、さらに仕様の種類が増加したり、ネットワーク構成が複雑化したりする中で、検証パターンの増加が見込まれている。そうした状況でも素早い協調仕様作成・最適化を維持するため、仕様検証、結果分析をさらに自動化できるように手法の確立に取り組む方針を示している。
状態遷移表を使用した要求分析モデル
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