車載ソフトウェアを扱う上で既に必要不可欠なものとなっているAUTOSAR。このAUTOSARを「使いこなす」にはどうすればいいのだろうか。連載の第7回では、AUTOSAR Classic Platformに次いで新たに登場したAUTOSAR Adaptive Platformについて説明する。
本連載では、これまでAUTOSAR Classic Platform(以下、CP)を中心とした解説を行ってきました。今回は、AUTOSAR Adaptive Platform(以下、AP)について触れてみたいと思います。
CPの登場の背景については、本連載の前回掲載分(第6回)で既に述べました。ここでは、APにフォーカスして、その登場の経緯を見ていきましょう。
CPや、それ以前に使われていたOSEK/VDX OSなどの静的OSベース※1)のプラットフォームは、主には制御系のECU(電子制御ユニット)で使われてきました。
しかし、制御系以外では以前から状況は異なっていました。特にインフォテインメント系(IVI:In-Vehicle Infotainment)では、QNXなどのPOSIX系や、μITRON系の動的OSベースのプラットフォームは以前から使われており※2)、静的OSベースのものだけでは対応できない分野があることは明らかでした。
※1)OSのオブジェクトが静的に生成されるものをここでは静的OSと呼んでいます(動的生成が可能ならば動的OS)。なお、μITRONのように動的OSであっても、静的OSとして機能制限して使用できるものもあります。
※2)IVIだけではなく、ヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)や最近では当たり前になった高解像度ディスプレイベースのメーターなどでも使われています。また、最近では、車載でも利用可能なLinuxの開発のためのAutomotive Grade Linux(AGL、2012年から)や、従来は自動車メーカーごとに独自ソリューションが構築されてきたミドルウェア部分について、現在はLinuxベースでのオープンソース開発を進めているGENIVIアライアンス(2009年から)などの活動も行われてきました。
CPやIVIが使われて来た分野とは異なり、各種の運転支援技術や自動・自律運転技術を量産車へ本格的に導入するためには、以下のようなことが求められます[1]、[2]。
どちらかといえばハードリアルタイム性と安全性を最優先してきたCPは、トレードオフ関係もあることから、必ずしもこれらへの項目の全てを得意としているわけではありません※3)。
※3)そもそも、CPは万能を目指しているわけでは決してありません。APも同様です。むしろ、「適材適所」という考え方がベースにあると考えるのが自然です。
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