「妄想を現実に」パナソニック津賀氏が語る“社会実装型ラボ”の意味ベンチャーニュース

パナソニック、ロフトワーク、カフェ・カンパニーが共同運営する「100BANCH」は2020年7月7日、周年イベントである「ナナナナ祭 2020」のオープニングプログラムとしてパナソニック 代表取締役社長の津賀一宏氏らの基調対談を開催した。100BANCHでの各種取り組みがパナソニック、ひいては社会全体に対して持つ意味などが語られた。

» 2020年07月08日 14時00分 公開
[池谷翼MONOist]

 パナソニック、ロフトワーク、カフェ・カンパニーが共同運営する「100BANCH」は2020年7月7日、周年イベントである「ナナナナ祭 2020」のオープニングプログラムとして基調対談を開催した。登壇者はパナソニック 代表取締役社長の津賀一宏氏と共創型戦略デザインファームBIOTOPE CEOの佐宗邦威氏の2人。対談では100BANCHでの各種取り組みがパナソニックにとって、また、社会全体に対して持つ意味などを語り合った。

 100BANCHはアクセラレーションプログラム「GARAGE Program」などを主軸に、35歳以下の若い世代のベンチャー創業や商品開発、アート活動などを支援する目的の施設である。GARAGE Programにプロジェクトを応募し、採択されると、100BANCHの2階にある実験用ワークスペースなどが3カ月間無償で使える他、GARAGE Programのメンターからアドバイスを受けられる。プロジェクト企画者はこれらの特典を活用して、自身のプロジェクト実現を目指していく。

パナソニックなどが運営する「100BANCH」の建屋外観[クリックして拡大] パナソニックなどが運営する「100BANCH」の建屋外観[クリックして拡大]

 100BANCHの特徴の1つが「コオロギなどの昆虫食を事業化する」「ふんどしのファッションアイテム化を目指す」など独特なプロジェクトを多く採択し、その実現をサポートしてきたという点だ。

パナソニック 代表取締役社長の津賀一宏氏 パナソニック 代表取締役社長の津賀一宏氏

 元来、パナソニックが電機メーカーであることを考えると、こうしたプロジェクトのサポートが直接収益につながらない「無駄」な取り組みにも見えるが、津賀氏は「今後は企業の利益を超えた世界をどのように作るのか、ということが企業や社会全体の共通課題になる。発想は面白いけれど多くの人が『金にならない』『会社のためにならない』と言って切り捨てるアイデアをどの程度拾えるか。妄想を現実に近づける努力が問われるようになる」と考えを述べる。さらに「100BANCHは『妄想を現実に変える』ためのセンスが養われる場だ」と強調する。

 「例えるなら、100BANCHは雀荘のようなものだ。時間と能力に余裕がある人が集まり、会社の定時である5時以降に集まってみんなで楽しむ場所。余裕がある人はどんどん通って、雀荘に集った人から刺激を受ける場所になってくれればありがたい」(津賀氏)

BIOTOPE CEOの佐宗邦威氏 BIOTOPE CEOの佐宗邦威氏

 また佐宗氏は「100BANCHは新技術の研究開発を主軸とするよりは、技術の社会実装のための仕組みづくりを目指すラボだ。現在、民間だけでなく公的研究機関でも、社会実装寄りの研究を行う場への注目度が上がっている。従来のR&D(研究開発)では論文化や知財化を通じて最終的に収益を生むというビジネスモデルが成立していたが、こうした仕組みにも変化が訪れるかもしれない」と指摘した。

 これに対して津賀氏は「従来のR&Dでは開発した技術をモノに仕込んで、量産化して収益を上げるという図式が固定化されていた。これは長期的に収益を上げることができる利点はあるが、モノの売り方や、企業と顧客の関係変化が生じつつある現代のような情勢では脆さも露呈する。一方で社会実装型のラボでは顧客と企業などのプロジェクト企画者がダイレクトにつながり、その後のサポートもしやすい。家電を軸に事業展開を行う当社にとっては、実はこうした社会実装型のラボこそ事業的には適しているとさえいえるかもしれない」と語った。

 100BANCHでの成果発表など行うナナナナ祭 2020は、2020年7月7日から同年8月7日にかけて開催される。

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