試作品と量産品の区別を踏まえ、試作イベントがどのように進んでいくのかを、トヨタを例に説明します。
AS(Advanced Stage):量産開始の24カ月前
試作検討段階で、試作品を使用します。場合によってはサプライヤーが確定しておらず、試作専門メーカーの部品が使用されることもあります。
FS (Final Stage) :量産開始の18カ月前
最終試作評価のことで、ここでも試作品を使用します。自動車メーカーはこの段階で問題を潰しこみ、量産品の図面を作成します。ただし、近年では企画段階の部品共通化やCAEによる実証拡大が進んでおり、試作費削減という観点からこの段階での試作は行われない場合も増えています。
CV (Confirmation Vehicle):量産開始の12カ月前
性能確認車を製造します。設計の狙い通りの性能が達成できているか、性能確認車を使って各種試験が行われます。また、工場での組み立てが可能なのか、生産性も確認します。この段階では本型品が要求されます。
1A(1次号試):量産開始の6カ月前
量産試作です。本型、本工程品を使用します。自動車メーカーの実際の生産ラインで組み付けが行われるます。この際に量産時と同様の設備や金型が求められるので、サプライヤーはこのタイミングまでに生産準備を完了させておく必要があります。生産される数量は少なく、LVPT(Low Volume Production Trial)としての位置付けです。
量確(MPT:Mass Production Trial):量産開始の2カ月前
量産確認です。1Aと同様に本型、本工程品を使用し、自動車メーカーの実際の生産ラインで組み付けられます。1Aよりも生産量を増やし、実際に長時間生産して問題がないかを確かめる「HVPT(High volume Production Trial)」として行われることが多いです(分けられる場合もあります)。
品確(QCS:Quality Confirmation Stage):量産開始の1カ月前
品質確認です。もちろん、本型、本工程品を使用します。実際に量産が始まる前に品質上の問題ないか最終チェックを行います。サプライヤーでは、自動車メーカーへの納入や部品準備の観点から、この段階で量産開始としている場合も多いです。
量産開始(SOP;Start Of Production/LO;Line Off)
量産の立ち上がりです。実際に生産ラインで車両が組み立てられます。トヨタの場合、この量産品を「号口品(ごうぐちひん)」とも言います。開始数日は数量が少ないですが、徐々に数量が増え、サプライヤーはその需要に合わせて供給する必要があります。
このような試作イベントを経て、クルマは実際に生産されます。トヨタを例に説明しましたが、これらのイベントは自動車メーカー各社でほぼ共通です(一部当てはまらないものもあります)。ただし、自動車メーカーごとに呼び名が異なるため、それぞれのイベント名を覚えておく必要があります。
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