製造現場をつないで知能化するIoTゲートウェイ、カギは「オープン」:エッジコンピューティング(2/2 ページ)
モノトークスではこれらの考えから「PLCnext」をベースとして「ネクスト・ゲートウェイ」を開発し、製品提案を開始した。
安藤氏は「製造現場でもデジタル化が進む中で、ゲートウェイの重要性が高まっている。従来はOTの中だけ、ITの中だけで完結していた世界だったのが、IT(情報技術)とOT(制御技術)を結んでいく必要がある。その中でそれぞれの強みを最大化するということが求められている。ITがデータの分析や処理に専念し、OTが現場のオペレーションに専念できるように、負担なくデータを収集して前処理をしてITに受け渡す役割をゲートウェイが担う」と考えを述べている。
「ネクスト・ゲートウェイ」では、一般的なゲートウェイが入力情報を出力するだけなのに対し、ファンクションブロック(FB)を設定することで、データの変換や簡易処理を行ってから出力することができる。そのため、全てを収集後に処理を行い、そこから分析を行うのではなく、必要なデータの形で収集しすぐに分析などを行えるようにする。情報の収集から蓄積、分析、フィードバックというサイクルタイムを大幅に短くできるという利点がある。これらの機能と、内蔵されたWebサーバ機能を組み合わせることで、「ネクスト・ゲートウェイ」のみでそのまま「見える化」することなども可能だ。
FBを設定することで情報の前処理などをゲートウェイ上で行うことができる(クリックで拡大)出典:モノトークス
プログラムや設定についてもFBなどを使うことで現場の技術者でも簡単に設定できる点も大きな利点である。「国内の製造現場が、少量多品種化へと進む中で必然的に段取り替えの回数なども増える傾向にある。その中で設定の変更などを行う場合にも従来は専門技術者が必要だったが、ネクスト・ゲートウェイでパラメータの変更を行うだけであれば、簡単に行うことができる。今後PLCの専門技術者が少なくなる中でこうしたシンプル化が必要になる」と安藤氏は述べる。
ネクスト・ゲートウェイの設定画面(クリックで拡大)出典:モノトークス
モノトークスが「PLCnext Store」に登録した「MODBUS_TCP_MASTER」。アジアでは初の登録となるという(クリックでWebサイトに)
また、これらのFBはアプリストア「PLCnext Store」から直接ダウンロードして活用できる。これにより、必要なFBなどを組み替えつつ、より短期間で求める機能を実現することが可能となる。既にモノトークスでは「PLCnext Store」に「MODBUS_TCP_MASTER」を登録しており、今後もFBなどアプリ登録を必要に応じて広げていく。ちなみにモノトークスの「PLCnext Store」へのアプリ登録は、アジアの企業では初になったという。既に「ネクスト・ゲートウェイ」の提案活動は開始しているというが「関心は高い」(安藤氏)。期待される市場については「現状では、食品加工業などにアプローチをしているが、幅広い製造業で活用できると見ている。提案の幅を広げていく」と安藤氏は語っている。
「PLCnext」ベースで開発したことでアプリストア「PLCnext Store」からネクスト・ゲートウェイにファンクションブロックをダウンロードし機能を追加することができる(クリックで拡大)出典:モノトークス
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