ルネサス エレクトロニクスはオープンソースの設計仕様に基づいた移動式人工呼吸器のレファレンスデザインを作成した。人工呼吸器システムの開発短縮化につながる可能性。
ルネサス エレクトロニクスは2020年4月16日、医療機関の内外で使用可能な移動式人工呼吸器を効率的かつ短期間に設計できる、オープンソースの設計仕様に基づいたレファレンスデザインを作成したと発表した。これを活用することで、病院や自宅で運用可能な医療用人工呼吸器システムを短期間で開発できる可能性がある。
レファレンスデザインの作成では、心臓ペースメーカーなど医療用機器販売を手掛けるメドトロニックが設計仕様を公開中の「PB560(Puritan Bennett 560)」をはじめとするいくつかのオープンソースの人工呼吸器システムを参照した。
現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴い、同感染症の患者数に対する人工呼吸器の数が世界各地で大幅に不足している。こうした事態を踏まえてルネサス エレクトロニクスは「当社の幅広い製品ポートフォリオとシステム設計のノウハウを活用することで、病院や自宅での操作が可能な医療用人工呼吸器システムを短期間で開発できるよう支援する」(同社 執行役員兼IoT・インフラ事業本部のクリス・アレクサンドル(Chris Allexandre)氏)という方針を決め、レファレンスデザイン作成に取り組んだという。
今回発表されたレファレンスデザインを基に製造した人工呼吸器は、ルネサス エレクトロニクス製の半導体を約20個使用する。また、PB560をベースに設計したことで、患者の状態を監視しつつ、それに合わせてMCU(Micro Controller Unit)が吸入管の酸素流量を制御し、管理する仕組みが実現できた。センサー基板とモータ制御基板にはMCUが搭載されており、それらが各基板の状態を監視して指令を制御し、患者への安全を確保する。
加えてBluetooth接続も可能で、医療従事者はタブレット端末や携帯機器を使って、複数の患者を同時に監視できる。また加湿器を人工呼吸器の摂取経路に長時間接続することで、患者の呼吸を和らげて、効率的に快方に向かわせる処置も可能になる。
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